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アメリカ大統領選の行方が世界の耳目を集めている。共和党の候補はジョン・マケイン氏で確定したが、民主党の候補者指名はヒラリー・クリントン氏とバラク・オバマ氏との間で、稀に見る熾烈な争いが続いている。 日本では、福井県の小浜市が同じ名前の縁でオバマ氏を応援しているという平和なニュースが、ロイターやCNNなど外国メディアまで巻き込んで注目を浴びたが、一方で、全く別の観点から、オバマを支持している人たちがいる。 イスラエルとの対立が続くパレスチナのガザ地区に住む青年たちである。 この意外なニュースを伝えるのは、中東カタールに本拠を置く衛星テレビ、アルジャジーラ(英語版)だ。動画サイトのYouTube(ユーチューブ)に設置された専用サイトで「Gaza's Obama campaign」と題された動画を見ることができる。 動画の中では、パレスチナの青年がオバマについて次のように語っている。 「彼はアメリカの内部を変えられるかもしれない。そして中東に平和をもたらしてくれると期待しているんだ」 青年はその具体的な理由についてはあまり述べていなかったが、オバマが一貫してイラク戦争に反対していたこと、そして父方の祖先がケニア人であり、イスラム教徒の血を引いていることが、期待感の底にはあるのだろう。 WASPという言葉に示されるように、建国以来アメリカは、ホワイト・アングロサクソン・プロテスタントが主流の国であり、もしオバマが大統領となれば、その歴史は大きな転換を迎えることになる。 対イスラエル強硬派組織のハマスが2007年6月に武力占拠で実権を握り、イスラエルとの戦争状態が続くガザ地区は、中東の困難さの象徴でもある。私がガザ地区を訪れたのは、9.11事件から数ヶ月後、イラク戦争が始まる1年以上前のことだが、イスラエル軍の攻撃によってガザ地区の船舶が転覆させられている光景を見た。 当時と比べ、彼らを包む閉塞感は何も好転していない。そしてパレスチナの人々は、イスラエルの背後に世界最強のアメリカがいるから、自分たちは苦杯をなめ続けているのだと考えている。 動画ニュースの最後に、「さらばブッシュ。お前がいなくなってせいせいするぜ」と壁にペンキで描く男性の姿が映し出されていた。ジョージ・ブッシュ現大統領への憎しみの反動もまた、オバマへの期待となって表れているのだろうか。 (2008年4月3日掲載)
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