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江戸城再建へ、NPOが活動  夢と希望、自信と誇りを持てる「日本」へ



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 かつて江戸城があった。急速に拡大する大都市だった江戸の中心に、絢爛たる江戸城がそびえていた。しかし1657年、10万人が死んだといわれる明暦の大火で天守閣は焼け落ち、以来350年再建されることがなかった。

 この江戸城の再建を目指して活動を始めているNPO団体がある。東京ビッグサイトで9月23、24日に開催されていた旅行博の会場内において、「江戸城再建を目指す会」(以下「目指す会」と略す)理事長の小竹直隆氏(JAPAN NOW観光情報協会副理事長、元JTB代表取締役専務)の講演発表を聴いた。

 再建運動について「目指す会」は3つの目的を掲げている。

 1つ目は、世界に類を見ない日本固有の歴史と伝統、文化を見直し、失われた日本人の自信と誇り、アイデンティティを取り戻すこと。

 2つ目は、再建江戸城を、国の光として世界に発信し、魅力ある国づくり、観光立国のシンボルとすること。

 そして3つ目は、一度も戦火に見舞われなかった江戸城を、平和の砦として新たな国際交流、地域交流の一大拠点にすること。

 再建場所は皇居東御苑。そこに遺された台座の上に、できれば大坂城や名古屋城のような鉄筋コンクリートではなく、当時の素材と技術に沿った木造で、五層の天守閣を築く。

 おおよその予算としては、鉄筋コンクリートの場合は100−200億円、木造の場合は300−400億円。さらに木造の場合は、現行の建築基準法で許可されないという問題点もあるという。

 「目指す会」の内部でも、鉄筋コンクリートにするか、木造にするかは意見の分かれるところであるが、日本の歴史文化に誇りを持つためという点において、木造にこだわりたいと、小竹理事長は語った。

旅行博会場における「江戸城再建を目指す会」の展示
【旅行博会場における「江戸城再建を目指す会」の展示】

 再建に向けてのもう一つの課題として、皇居東御苑という場所の特殊性についての説明があった。20年ほど前に、自民党の議員の中から再建計画が持ち上がったことがあるそうだが、「やんごとなき御方が住んでいるそばに建てられるのか?」という疑問があがり、いつのまにか沙汰止みになってしまったのだという。

 皇居東御苑は宮内庁の管轄である。政治で取り上げることが難しいものを、民間の力で、草の根運動から国民運動へと拡大することによって、実現へと進めたいというのが、「目指す会」の展望である。

 5つの段階に分けて、再建運動の長期構想の説明がなされた。

 第1段階: 任意団体の設立(2004年12月)。

 第2段階: 社会的認知を得るためのNPO法人の設立(2006年3月)。

 第3段階: 各界各層に共感と参加・支援を求める草の根運動の拡大。

 第4段階: 再建・築城計画の具体化と国民運動への点火。

 そして第5段階が、天守閣を中心とする江戸城再建の実現である。

 すでに第2段階までは終了し、いよいよこれからが第3段階、現在400人足らずの会員数を、500人、1000人と増やし、世論を動かし、政治を動かし、実現につなげたいとのこと。

 「天守閣の最上階で天皇陛下が国賓にお会いになるようなことがあっても良いのではないか。皇居にあるからタブーということではなく、再建された江戸城は国民の財産であり、東京は世界で最も魅力ある都市となれる」

 小竹理事長は熱っぽく言葉を続けた。本来は1時間の予定だった講演は、質疑応答の時間を含め、30分近く延長されることとなった。

 単にハコモノを造ろうという考えではなく、日本人に夢と希望を与えたい、自信と誇りを持てる国をつくりたいという理念に、私は強く共感した。国際化社会において最も重要なことは、英語が喋れることではなく、グローバルスタンダードに従うことでもなく、まず自国のことよく知り、自国の文化や歴史について、他国の人々に対し自信を持って説明できることである。その上で他国の文化を尊重し、協調できることが望ましい。

 会員数の内訳について、私は質問した。一朝一夕に実現することではないし、国民運動へと広げていくにあたっては若い世代の支持が不可欠であると思う旨を述べ、その点についての見解を伺った。

 詳細な統計データはないそうだが、男女比は概ね8:2、年齢層は高く平均60歳前後であるとの回答だった。若い世代の参加を得ていくのは今後の課題のようだ。今はまだホームページもなく、資金的にも人材的にも不足しているので、ぜひあなたのような若い方に加わってもらいたいと、私は逆に勧誘を受けた。ちなみに入会の案内によると、正会員は年会費3000円、賛助会員が同1000円とのこと。事務局連絡先(資料請求等)は03−5968−4080である。

   東京の都心に、絢爛な天守閣が蘇る日がいつ来るのか。運動の発展を期待したい。
(2006年9月27日掲載)

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