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今年は野球に大いに感動させられる年であり、反面その人気低下が叫ばれる年でもある。 前者の例としては、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表の劇的な優勝があり、先日の決勝戦再試合にもつれこんだ高校野球の熱闘がある。どちらも高い視聴率を稼ぎ、社会現象を巻き起こし、野球人気再興の起爆剤になるのでは、と期待された。 ところがプロ野球中継はさっぱり奮わず、首都圏においてはついに野球放送を取り止めるテレビ局も出てきている。多くの野球ファンにとってはとても残念な状態だ。 8月30日、31日と日本テレビ系では巨人対広島を放映している。なぜこの時期に、優勝の可能性がほとんどない両チームの試合なのか。野球人気そのものの凋落ではなく、いまだ巨人一辺倒の硬直したマスコミの姿勢に問題があるのではないかと思う。 いまパリーグが激戦のさなかである。2強の西武とソフトバンクが譲らぬデッドヒートを繰り広げ、さらに12球団で最も長い期間優勝に縁がなかった日本ハムが、落ちそうで落ちず、充分1位通過を狙える位置に食らいついている。松坂、松中、小笠原ら日本代表で奮迅した男たちを軸に、客を呼べる選手も揃っている。次世代の選手も台頭してきている。 つまり良い具材はあるのだ。あとはどう調理するか、いかに魅せるか、そこはテレビ局の腕の見せ所ではないだろうか。 かつて川崎球場で伝説の死闘があった。近鉄対ロッテの最終戦ダブルヘッダー、近鉄は連勝すれば優勝、さもなくば西武が優勝という緊迫の試合、当初テレビ中継の予定はなかったが、急遽テレビ朝日が放送を決めた。高い視聴率をとり、またその英断は世間的にも高く評価された。 私たちは、より質の高い真剣勝負なら見たいと思うのだ。WBCも高校野球も、普段あまり野球を見ない人が見た、感動した、と言う。サッカーのW杯なども同様だろう。 現状のプロ野球中継は、もともと野球好きな人、しかも巨人が好きな人しか対象に作られていないように思われる。野球をあまり見ないという人に、ドラマやバラエティからチャンネルを変えさせるだけの工夫を、テレビ局はしているのだろうか? (2006年9月2日掲載)
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