チャリダー養成講座/第十回 チャリダーの宿探し
一日走り終えて、大事な問題。さあどこに泊まろうか?
「泊まるところはどうしているの?」これまたチャリダーがよく受ける質問の一つです。野宿をするか、宿をとるか。選択肢は二つあります。田舎ではキャンプをし、都市部に入ったらホテルを探すという方法もあります。
ここではまず、宿に泊まる場合の話をいたしましょう。
ライダーの間では、バイクで泊まれる宿はどこかという情報ネットワークがあると、聞いたことがあります。バイクを停められるだけの駐輪スペースの確保と、その安全性が重要になるからです。
自転車の場合、簡単に屋内にも持ち込めるので、そこまで神経質になる必要はありません。バックパッカーの宿探しと同じに考えていただいてよいのです。しかし、寝ている間に自転車をどこに置いておくかは、とても気になることではないでしょうか。
●部屋の中
まず、最も安全で安心なのは、泊まっている部屋の中に、自転車を入れてしまうことです。もちろん宿側の了解がないとできないことですが、夜の間もずっと愛車と一緒にいるわけですから、盗まれたり傷つけられる心配はまずありません。パンク修理などの整備を行うのも、これなら楽チンです。
日本の旅館やホテルの常識で考えると、部屋の中に自転車なんてありえないと思うかもしれませんが、途上国の、特に田舎の地元の人が利用するような安宿であれば、了解してもらえることが多いです。
【ブルガリア/自転車を部屋の中に持ち込んだ(テーブルの裏)】
●廊下や中庭
部屋が狭い場合、個室ではなく相部屋の場合、あるいは上の階で、階段をひたすら担いで登るのが大変な場合、そして宿の人に指定された場合など、部屋の中ではなく、廊下や中庭に自転車を置かせてもらうことがあります。
その場合、サイドバッグやフロントバッグなど一式ははずして部屋に運び入れ、自転車本体はちゃんと鍵を掛けましょう。
【スーダン/宿の敷地内、部屋の扉の前に自転車を置く】
●倉庫や物置き
大きなユースホステルなど、宿によっては、自転車を保管できる倉庫や物置きがあります。出し入れするのにいちいち宿の人に鍵を開けてもらう面倒はありますが、安心はできます。ただ、別料金を取られることが稀にありました。
●外
ライダーで、宿の中に置ける場所がないため、バイクを外に置いていたという例を私は知っていますが、自転車の場合はおよそ考えられません。新しい宿を見つけて、値段交渉の間、宿の前に停めておくということはありますが、そのときももちろんしっかりと鍵は掛けましょう。
●自転車を預ける
さて、泊まっている間、宿に自転車を置いておくのは当たり前のことですが、ときには、自転車を宿に預けたまま、外泊をするということが考えられます。自転車を何日か預けることができるかということを、続いて考えていきましょう。
私が初めて自転車を預けたのは、学生時代に訪れたマレーシアでした。メルシンという港町の宿に自転車を預け、船でティオマン島という小さな島に渡ったのです。また、同じ旅行で首都のクアラルンプールの宿にも自転車を預け、国立公園のタマンヌガラにも出かけました。
世界一周の途中では、もっと長い期間、自転車を預けっぱなしにしたこともありました。シリアのダマスカスに預けて、隣国のレバノンに出かけたり、ヨルダンのアンマンに預けて、イラクやイスラエルに出掛けるということがありました。
【ヨルダン/アンマンの宿クリフホテル】
たとえば大陸横断の旅を志したとき、その本線の道はひたすら自転車で走るとして、街道から外れた枝葉の観光地は、自転車を置いて効率良くバスや列車で訪れる。そんな旅の組み立て方も、チャリダーならではの自由度です。
ちなみに自転車を預けっぱなしにできるか、それで安全かどうかは、これはもう宿次第です。無料で快く預かってもらえる場合もあれば、料金を請求される場合もあるかもしれません。あるいは廊下や中庭に、半ば勝手に置きっぱなしにできるけれど、責任は負えないという場合もあるでしょう。
ただ、自転車に限らず、ザックなど大型の荷物を宿に預け、しばらく別の場所に出かけてまた戻ってくるというのは、バックパッカーの間でも普通に行われていることですので、寄り道を思いついたら、その時点で宿と交渉してみるといいかもしれません。特に外国人旅行者が多く利用するような拠点の宿であれば、むげに断られることはないはずです。
さて。今回は宿に泊まることを前提に話を進めましたが、もちろん自転車旅行においては、宿がない、という場合もありえます。次回は野宿について考えていきましょう。