チャリダー養成講座/第五回 荷物はどこに積むか
自転車を買った。次に装備を揃えよう。まずは、いかにして荷物を積むのか?
自転車を一台買いました。日帰り旅ならそれだけでも出発することができますが、何日もかけた自転車旅行を志す場合、やはりそれなりの装備を用意することが必要です。
まず大事なのは、いかにして荷物を積むかということです。着替えや食糧、自炊道具や修理工具など、様々な旅の荷物を、収納して自転車に積まなくてはいけません。
ママチャリには籠が付いていますが、ランドナーやマウンテンバイクには普通籠は付いていません。駅や学校までの通勤や通学なら背中に鞄を背負うこともできますが、何十キロも何百キロも長い道のりを目指そうというのなら、ザックを背負っての走行はまったくお薦めできません。
その代わりに、フロントバッグあるいはサイドバッグといった自転車旅行用の鞄が市販されています。前輪の上に載せる、あるいはハンドルから釣り下げるのがフロントバッグ、前輪ないし後輪の左右に取り付けるのがサイドバッグです。
順番に説明していきましょう。
●ザック
お薦めできないと書いておきながら、まずザックについて説明をするのは、長期旅行においてはザックが第一に便利だからです。チャリダーであると同時にバックパッカーとして、ザックは長旅には欠かせない必需品です。
私もまた世界一周の旅の間、ザックと共に道を走り続けていました。学生時代から愛用の三五リットルのザックです。
腰に負担がかかるため、背負って走ることはしません。宿から駅までのようなごく短い距離だと分かっている場合は例外ですが、おおむね十キロ以上(つまり三十分以上)走る場合には、必ず荷台に括り付けました。
ザックの大きさや、自転車への括り付け方は、別にサイドバッグを用いるかどうかによっても変わってくるでしょう。私はロープでぐるぐるに縛り付けるやり方をとっていましたが、荷物を詰め過ぎた場合や悪路の場合、ロープが弛んで荷崩れすることがありますので、力を入れてしっかりと結びましょう。
【ザック/赤いカバーを付け、後輪のキャリアの上に搭載】
●サイドバッグ
自転車旅行だけに特化して考えれば、ザックよりもサイドバッグのほうが優れています。サイドバッグは名のとおりタイヤの左右両側に括り付けて用います。市販のものが装着も簡単で便利なのですが、なぜか私が大学時代に所属していたサイクリング部では、伝統的に手製のサイドバッグを用いることになっており、布を買い、畳針のような太い針で手縫いしなければいけませんでした。
二つ一組のサイドバッグですが、前輪に取り付ける場合と、後輪に取り付ける場合、さらに四つ二組を前後輪に取り付ける場合があります。一般に前輪の両側に付ける場合は、重心が前にくるためにハンドル制御は重くなりますが、上り坂で踏ん張りが効きやすいという特徴があります。反対に後輪に付ける場合は、乗る人間の体重もまた後輪にかかるため、前後のバランスは悪くなりますが、走行の安定性は高いと言われています。
実際のところ、どちらを選ぶかは自由です。私は学生時代に前サイド方式で習ったために前輪につけるやり方に慣れていますし、前輪にサイドバッグ、後輪の荷台にザックを載せることにより、前後の重量バランスをとっていました。
旅先で出会ったチャリダーたちの統計をとってみると、後サイド方式のほうがいくらか多いように思いました。前輪にも後輪にも合計4つのサイドバッグを付けるフルサイド方式は、荷物が相当に多い人向けですが、私はやったことがありません。
【サイドバッグ/後輪の両側に付けるタイプ】
●フロントバッグ
フロントバッグは名のとおり、自転車の前部に取り付けられる鞄です。ハンドルからぶら下げる場合と、前輪に据えた荷台に載せる場合があります。ハンドルにぶら下げるタイプは容量小さめですが、荷台なしでも簡単に使うことができます。
フロントバッグの用途は、サイドバッグやザックと比べて、いつでも手軽に荷物が取り出せるという点にあります。つまり休憩用の食糧であるとか、突然の雨に備えた合羽であるとか、あるいはパンク修理の道具などを入れておくのに便利です。フロントバッグは頂部がビニール製で地図を収納できる作りになっているものも多いので、走行中に地図を確認することもできます。
【フロントバッグ/ハンドルから吊り下げている】
●その他
自転車屋に行くと、さらに細々とした自転車用の小物入れが売られています。ちょっとした工具などを入れるのに便利です。
また、地味ながら絶対に欠かせないものとして、ボトルホルダーがあります。チャリダーにとって水は命ですから、長距離を走るのであれば、二つ以上取り付けたほうがよいでしょう。
ザックを積むか、サイドバッグを据えるか、フロントバッグを使うか、あるいはその組み合わせを選択するか、荷物の総量と旅のやり方によって、決めたらよいでしょう。たまには自転車を降りて鉄道やバスの旅、あるいは登山などを絡めるのであればザックは必需品ですし、テントや寝袋、自炊道具などキャンプ用品完備で走るのであれば、サイドバッグの収容能力は頼りになります。