チャリダー養成講座/第四回 自転車のお値段
いくらくらいの自転車を買えばよいのか。高ければ高いほどよいのか?
なぜ自転車なのか、という質問と同じくらい頻繁に、その値段について訊かれたことがありました。途上国で現地の人に問われた場合は、実際の価格よりも半額か、さらに安い値段で答えることが常でしたが、もちろんここでは正直に答えましょう。
私が今までに旅行用として買った自転車は四台あります。それぞれ値段がバラバラですので、順番にお答えします。
まず一台目。学生時代にサイクリング部に入部して購入した自転車は、トラベゾーンと呼ばれるブリジストン社製のランドナーでした。現在は残念ながら販売されていないようですが、値段は約十万円でした。自転車がそんなに高いのかと、ひどく驚いた記憶があります。
【学生時代に乗っていたランドナー/およそ10万円】
次に二台目。トラベゾーンを学生時代に乗りつぶしてしまい、社会人になってすぐに買った自転車は、マウンテンバイクでした。パナソニック製で、サイズはもちろん、パーツの種類、フレームの色や、サスペンションの有無など、オーダーメイドで選ぶことができ、値段は十四万ほどのお値段でした。
【社会人になって購入したマウンテンバイク/およそ14万円】
続いて三台目。世界一周旅行の最初にアラスカで買ったマウンテンバイク。ハンドルが8の字をした持ちやすそうな形状が気に入ったのですが、それで九万円ほど。同じものをもし日本で買ったとしたら、おそらく十万円は超えたと思います。しかしこの自転車は、途中で盗まれてしまいました。
【アラスカで購入したマウンテンバイク/およそ800ドル】
最後に四台目。先代が盗まれてしまったために、イタリアで買ったマウンテンバイクです。値段は三万円弱。また盗まれることを恐れて安いものを買いました。ただ、やはり日本で買えば、五万円から六万円以上はする品だと思います。
【イタリアで購入したマウンテンバイク/およそ4万5000リラ】
海外での値段を出すとややこしくなるので、ここでは日本での購入を想定して話を進めますが、無難なのは私が一台目に買った十万円前後の価格帯です。長期の旅行に充分耐えうる耐久性があり、長距離の移動にも疲れない機動性があり、持ち運びが苦にならないだけの軽さがあるはずです。
四台目に買った自転車がそうでしたが、値段が安くなると、明らかに車体が重くなります。旅行用として用いる場合、本体重量でおおむね十キロ未満が目安でしょうか。それでもさらに荷物を積み込むと、容易に三十キロほどの大重量になります。
また、あまりに値段の安いものは耐久性に問題がありますので、避けたほうがよいでしょう。はっきり言えば、同じマウンテンバイクでも、スーパーで三万円程度で売っているものは、いわゆる町乗りマウンテンであり、旅行には適しません。
逆に、あまり高額なものも、旅行にはそれほど意味がありません。中には二十万円、三十万円する自転車もありますが、それらはむしろ競技用の自転車です。何が違うのかと言えば、フレームの材質が違い、そして軽さが違います。値段が一万円高くなるごとに、チタンフレームになったり、カーボンフレームになったり、あるいは何百グラムかの軽量化が実現されているのです。
もう一つ値段を上げる要素として、ギアやブレーキなどのパーツの違いや、サスペンションの有無があげられます。これもまた競技のための部品であり、旅行に用いるのであればあまり重要ではないことだと思います。海外を走る場合、高額のパーツは壊れても代替品が手に入りませんし、前輪のサスペンションはともかく、後輪のサスペンションはむしろないほうが長距離を走りやすいといわれています。
あとはもちろん好みの問題になります。予算の都合もあるでしょうし、デザインや色の好き嫌いもあるでしょう。長期の自転車旅行をするのか、あるいは普段は町乗りとして使いたいかによっても変わってくるかもしれません。決して安い買い物ではありませんので、いくつか比較してお選びいただくと良いと思います。
また、自転車旅行をするにあたっては、自転車本体以外の装備も色々と必要になってきますので、御予算を組むにあたっては、その分の考慮もお忘れなく。
というわけで、自転車が決まったら、次は周辺装備を揃えていきましょう。