チャリダー養成講座/第三回 どの自転車を選ぶか
自転車といっても色々な種類がある。どんな自転車が旅に適しているのか?
世の中には様々な種類の自転車があります。どんな自転車を選んで旅行しようとも、それはその人その人の自由ですから決まりはありませんが、一般的に旅行用の自転車として用いられるのは、ランドナーとマウンテンバイクの二つでしょう。ちなみに私が学生時代に乗っていたのはランドナーであり、世界一周に用いたのはマウンテンバイクでした。
●ランドナー
自転車に詳しくない人にとっては、おそらく耳慣れない言葉ではないでしょうか。ランドナーは、敢えて日本語に訳すなら旅行用自転車、まさにテントや寝袋を積んで旅をする目的で作られている自転車です。
ハンドルはドロップハンドルで、タイヤ径は比較的細く、長時間走行に向いた構造をしています。ドロップハンドルは、持ち手を高くしたり低くしたりと、走行中に身体の位置を自在に変えることができるので疲れにくく、タイヤは細いほうが路面抵抗が少ないため速度が出ます。
ツールドフランスなどで見かけるレース用の自転車ロードレーサーは、さらに肉厚の細いタイヤを用い、より軽量化を図って速度が出るように作られていますが、ランドナーはあくまで旅行用であり、ときには砂利道など悪路を走る必要もあるため、それなりに丈夫な太さのあるタイヤを用いています。
先にも述べましたが、私が学生時代サイクリングに所属していたとき、最初に買うように言われたのがこのランドナーでした。サイドバッグと呼ばれる荷物鞄を取り付け、フロントバッグを載せて、信州や北海道に出かけていきました。
マウンテンバイク人気に押され、近年は下火であまり見かけることも少ないランドナーですが、本来自転車旅行をする上では、最も長旅に耐え得る構造であり、最適であるといえるでしょう。
【ランドナー/前輪の両側にサイドバッグ】
●マウンテンバイク
現在旅行用としても最も多く用いられているのが、おそらくマウンテンバイクです。敢えて日本語に訳すなら山用自転車、でしょうか。
ハンドルは真一文字のバーハンドル。タイヤの肉厚は太く、悪路に向いた頑丈な造りをしています。ランドナーに比べれば速度は出にくく、長距離乗る場合には疲れやすい構造ですが、砂利道など未舗装路を走るのには適しています。ハンドルには通常ツノなどと呼ばれる握り棒を付けることにより、ドロップハンドルのように持ち手を変え、長距離走行がしやすいようにすることができます。また、本来はレース用であり、私は利用したことはないのですが、路面抵抗を少なくするために凸凹をなくしたスリックタイヤも売られています。
私が世界一周に選んだ自転車は、ランドナーではなくマウンテンバイクでした。その理由は悪路対策ということもありますが、部品の汎用性の高さという利点も重要でした。日本国内であれば、様々な自転車部品が容易に手に入りますが、海外においてはそうもいきません。たとえば、最も頻繁に交換の必要があるタイヤやチューブなど、手に入りやすいのはマウンテンバイク用の部品です。実際私が海外で出会ったチャリダーの大半は、ランドナーではなくマウンテンバイクに乗っていました。
【マウンテンバイク/後輪のキャリアにザック】
●レーサー
第三の選択肢としてロードレーサーが挙げられます。レーサーとは競技用の自転車であり、タイヤが細く軽量化が徹底された自転車です。長距離走行には向いた自転車であり、荷物を積んで旅行用として乗ることもできますが、パンクしやすいので悪路走行には不向きです。国内近郊、あるいは北米や欧州など道路事情の整った国、いざというときの代替部品が手に入りやすい国での旅行を予定するのであれば、よいかもしれません。
●その他
例外的な選択肢として、レーサーとマウンテンバイクの中間的なクロスバイクや、ごく普通のママチャリ、逆に特殊な二人乗りのタンデムなどが挙げられます。あるいは現地で自転車を調達して旅をするというやり方もあります。途上国では、中国製の鳳凰(フェニックス)号と呼ばれる武骨な自転車が有名です。たまにそういった自転車で旅に挑む強者チャリダーもいます。
【中国製鳳凰号/2人乗りタンデム車】
つまるところ、どの自転車を選ぶかは、個人の好みとこだわりになります。
私は学生時代にはランドナーで台湾やカナダやマレーシアに出かけました。数週間程度の比較的短期の旅行であったこともあり、ランドナーだから困ったということはまったくありませんでした。
もっと長期の旅となれば、どんなに慎重に乗ったとしても故障はしますから、マウンテンバイクのほうが、部品の入手など対処はしやすいかもしれません。(どうしようもないときも、もちろんあります!)。レーサーはあくまで競技用の自転車ですので、すでに持っている場合は別として、敢えて旅行用として選択することはないでしょう。
結論として、走りやすさで選ぶならランドナーですが、海外での普及度を考慮するならマウンテンバイクのほうが無難でしょうか。