ドバイ/UAE&オマーン子連れ旅行/第5日 陸路国境を越えてオマーンへ
勢い余って国境を越え、隣国オマーンに突入、アラビア半島ドライブの旅。
8月13日
砂漠の町、陸路国境を越えて
旅行者が集まるドバイの中心部や、リゾートエリアだけを訪れていても、面白くない。アラブ首長国連邦を、もっと縦横無尽に楽しもう。そう思ってドバイを飛び出し、内陸に出かけ、勢い余って国境を越えて、隣国オマーンまで行ってしまったという物語です。
目指したのは砂漠のオアシス都市アル・アイン。アラビア語で「泉」を意味するそうです。
ドバイのアル・グバイバ・バスターミナルから、中型バスでおよそ2時間、砂漠のハイウェイを疾走します。途中、建設途中のユニバーサルスタジオや、ラクダ牧場を見かけることができました。
そして到着したアル・アイン。バスを降りての最初の感想は、もちろん「暑い」です。
でも、ドバイの暑さとは少し違いました。ドバイは、蒸し暑い。でもアル・アインは、からっと暑い。そうです。内陸に来たため空気が乾燥していて、日差しは相変わらず強烈ですが、湿度が肌にまとわりつく感じがありません。日陰に入ると比較的過ごしやすいのです。
ドバイからツアーでアル・アインに来た人は、アル・アイン博物館や宮殿、ラクダ市場などを見学して帰るそうです。でも、私たちはそんな定番のみどころを、結局1つも訪れませんでした。
バスターミナルで乗ったタクシーの運転手はアフガニスタン出身! 立派な髭のおじさんで、連れて行ってもらった先はヒル・ボーダー、オマーンとの国境です。アル・アインの一帯は国境線が入り組んでいて、隣接するブライミという町はオマーン領なのです。石油の採掘を巡って、以前はサウジアラビアも交えての領有争いがあったそうです。
【UAE側の都市アル・アイン】
【UAEとオマーンの陸路国境】
話はずれますが、UAEの北部へ行くとオマーンの飛び地が複数点在していて、オマーンの飛び地の中にさらにUAEの飛び地がある、というなんともややこしい場所もあるとか…。世界地図って複雑だ。
国境越えの詳細については不明。事前に調べたところでは、簡単に越えられそうな感じもありながら、年々厳しくなっているという情報もありました。国境の町だけ自由に行き来ができ、さらに奥へ進んでいくにはビザが必要、というパターンは世界の色んなところで経験をしているので、たぶんそんな感じだろうと、なんとも適当な気分で突撃したのでした。
国境の手前、『Oman↑』という素敵な道路標識があります。「オマーンに行くよ」という私の言葉に、きょとんとした表情の4歳長男。湿度が低いとはいえ、相変わらずの強烈な暑さにうんざりした顔の2歳長女。
国境ゲートは高速道路の料金所のような体裁、ひっきりなしに車がやって来ます。いったん停止し、また進んでいきます。スムーズに流れているように見えます。私たちは長女を乗せたベビーカーを押して、徒歩で通過しました。自転車で国境を越えたことは何度もあるけど、ベビーカーは初めてだな。
と、係員に呼び止められ、出国オフィスはあっちだと、脇の小さな建物を教えられました。
失敗だったのは、現金をほとんど持っていなかったこと。ドバイに戻る帰りのバス代と、水などを買うくらいのお金はあったのですが、国境を越えるパーミッション(許可)の手数料が必要だと言われ、ピンチ。手持ちのUAEディラハムでは足りない金額でした。情報不足。
こんなとき、やっぱり頼りになるのは、現在暴落中(?)の米ドルです。私の財布には常日頃から、万一のときに備えての20ドル札と1ドル札が数枚入っています。1万円札や1000円札もありますが、こういうときには役立たず。その場にいたおじさんがディラハムに両替してくれて、無事許可のスタンプがもらえました。
冷房が効いた出入国事務所、両親が手続きにバタバタしている間、長椅子に寝そべってくつろいでいたのは長女、係官の兄ちゃん(とても暇そう)と絶好調でじゃれあって遊んでいたのは長男でした。おいおい、もう少し緊張感持ってくれよ。
「バイバ~イ」
係官の兄ちゃんに笑顔で手を振って、いざオマーンへ。
【オマーン入国】
【スーパーの前でくつろぐ兄妹】
オマーン国 (Sultanate of Oman) |
人口 | 287万人 | 面積 | 31万km2 |
首都 | マスカット | 宗教 | イスラム教(イバード派) |
言語 | アラビア語 | 通貨 | オマーン・リアル |
旅行期間 | 2011年8月13日(1日間) | ||
訪問経路 | (アラブ首長国連邦)~オマーン~(アラブ首長国連邦) |
至急オマーンリアルを入手せよ
オマーン辺境の町ブライミ。国境からまっすぐ、中央分離帯のある幅広い道が延び、左右両側に商店がぽつぽつと並んでいました。
昼下がり、推定45度以上の猛暑。暑い、暑い、暑い。
何と言っても現金がないのが困ったところ。このままでは水も買えず、干からびてしまいます。オマーンに入国して最初の課題は、どうやってお金を手に入れるかということでした。
まず見つけたガソリンスタンドでATMがあることを期待しましたが、ありませんでした。
ラマダン期間中で、飲食店はもちろん、営業しているお店が少ないブライミの町。顔を真っ赤に火照らせ「ホテルに帰りたい」とぼやき始める子供たち。
救いの神は1軒のスーパーでした。冷房の効いた店内、そしてクレジットカードが使えたこと。VISAカード万歳!
「好きなジュースとアイスを買っていいよ」という言葉に、子供たちもたちまち機嫌が直ります。4歳児&2歳児だと、まだこのくらいの「アメ」でご機嫌をとれるので、親としてはありがたいところです。
お店の入口にはオマーンの国旗や国王の肖像が飾られていました。商品の値札はもちろんオマーン・リアルです。驚いたのはドバイのスーパーでは見当たらなかったビールが売っていたこと。ごく普通のスーパーでしたが、本当にオマーンに入国したのだということを、実感できるひとときです。
【ブライミ・フォート】
【ブライミ・スーク】
こっそり喉の渇きを満たし、次の課題はやはり現金を手に入れること。スーパーで尋ねると、1キロほど先にマスカット銀行があるとの答。歩いていくのは大変なので、タクシーをつかまえることにしました。
ATMで無事10リアルの現金を入手! ATM万歳。
タクシーの運転手は、UAEではパキスタンなど外国人ばかりでしたが、こちらは自国民。英語は不得手のようで、アラビア語は話せるかと訊かれました。今回の旅行で、この質問は初めてです。すかさず「シュワイヤ(少しだけ)」と答えると、「今はラマダン期間中だから飲食はダメだけど、子供たちは食べてもいいんだぜ」と教えてくれました(たぶん)。
町の中心にある城砦跡ブライミ・フォートに到着。ブライミ唯一の見どころ(たぶん)で、中がスーク(市場)になっていました。野菜や果物が売られています。
たいして広いスークではありませんでしたが、車が列を成していました。みんな暑いので、冷房の効いた車から一歩も出ることなく、窓をちょっとだけ開けて欲しい商品を注文し、受け取って、ドライブスルーよろしく去っていくのです。
歩いてやって来たのは私たちだけ。話しかけてきた2人の兄ちゃんは、尋ねてみるとインド人。南インド、タミルナドゥの出身でした。ドバイのみならず、こんなところまで仕事を求めて来ているのですね。
オマーン土産にナツメヤシを買いました。1リアル(200円あまり)で山盛りくれました。
お金を出して買ったのはそれだけだったのですが、子供たちにとミカンと水をもらいました。ミカンは、いわゆるオレンジではなく、日本と同じミカンです。4歳長男は大喜び。水は…、ミネラルウォーターではなく、現地水でした。土っぽさを含んだ、かすれた味わいの水。2歳の長女がごくごくごく。まあ、たぶん大丈夫でしょう。
スークを訪れて、お土産のナツメヤシを買って、現地の人との交流もあって、オマーン満喫。さあ、そろそろドバイに帰ろうか、と思ったのですが、ここで大きな落とし穴がありました。簡単にはUAEに戻れない事実を突き付けられたのです。
【大きな木の下で】
【小さな商店】
再びUAEに戻ろうと、来たときと同じ国境へ。そこで、黒ずくめのお姉さんがひと言。
「オマーンの出国スタンプがないわね。これじゃダメよ」
国境の町ブライミだけは自由に行き来できるのではないか。安易にそう考え、オマーンに突撃したのですが、間違いだったことを知らされた瞬間でした。
実はブライミの町にはオマーン側の出入国事務所がありません。ですので、ここではスタンプをもらえないのです。
では、どこでもらえるのか。出入国事務所は、なんと実にブライミから60キロも離れたところにあるのでした! なんでそんなところに造ったのかオマーン政府。
「どうするの?」
あっけらからんと訊いてくる長男に、「このままじゃドバイに戻れないんだって」と正直に回答、事務所を出て、タクシーをつかまえます。
かくしてオマーン砂漠のドライブ旅行が始まりました。ちなみにチャーター費用は10リアル(2000円あまり)。
タクシーの運転手はカフィーヤ姿のオマーン人。助手席に知人らしきおじさんが乗っています。途中で降りるのかと思いきや、おじさんもそのまま一緒に砂漠ドライブ。ヒマなのでしょうか。外国では、まあよくあることです。
【オマーン砂漠ドライブ】
【出入国事務所】
60キロ(sixty)というのが、16キロ(sixteen)の聞き間違いじゃないかと、うすうす期待しながら後部座席に揺られること10分、20分、30分、ブライミの町はあっというまに終わり、何もない荒野の一本道をタクシーは疾走します。やっぱり60キロが正解なのでした。
でも本当は100キロかもしれません。いったいどこまで連れていかれるのか。時計の針は午後3時から4時へ。
行って帰ってきて、UAE側の事務所が閉まっていたら、どうしよう。いっそこのまま首都マスカットを目指してしまおうか。マスカットからアブダビに飛んで、そこから日本に帰れるし。でも、荷物はドバイのホテルに置きっぱなしだ。いろんな考えがグルグルと頭の中を巡ります。
のんきなのは子供たち。冷房さえ効いていれば、基本的に元気なやつらです。日本語なんか絶対通じないのに、長男は積極的に運転席と助手席のアラブのおじさん2人に話しかけていました。
まもなく車窓の景色が変わります。砂漠から山へ。荒涼としているのは相変わらずですが、オマーン西部は山岳地帯なのです。「これがアラブだ、この景色が見たかった」と、にわかに盛り上がっている妻。
やがて1時間ほどのドライブが終わり、モスクのような外観の出入国事務所に到着。オマーンの入国スタンプと、ビザと、出国スタンプを、まとめて全部無事に入手です。
【ドバイ、バスタキヤ地区】
高層ビルが林立する近未来都市ドバイでは、味わえなかったアラビア半島の雄大な景色。外国人だらけの国際都市ドバイでは、ほとんど交流の機会がなかった生粋のアラブ人。オマーンに来て、やっと出会うことができました。
やっぱりこのままマスカットまで行ってしまいたい。後ろ髪をひかれる思いで、国境を越えて、帰ってきたUAE、空はにわかに曇り、ドバイまでの道のりでは驚きの雨が降りました。