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チャリダー養成講座/第十七回 病気に気をつけろ



旅が長くなれば、病気になってしまうこともある。気をつけることとは?

 ただの風邪でもなく、通常の(一過性という意味で)下痢や食中毒でもない、より困難な病気に襲われることも、当然あります。私は世界一周の途中で、二度ほど通常以上の病気体験をしました。その話をします。

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タンザニア/そうと知らずA型肝炎を発症し、ぐったり
【タンザニア/そうと知らずA型肝炎を発症し、ぐったり】

●肝炎

 一つはA型肝炎。肝炎にはA型、B型、C型などがありますが、一番軽いといわれるのがA型です。汚染された水や食事が原因なのですが、身体の調子が良い場合にはかからず、体調が弱っていると病原菌に負けて発病してしまうといわれています。

 私はタンザニアで微熱を出し、はじめはいつもどおりの風邪だろうなと思っていたのですが、やがて尿が橙色になったり、便が真っ白になったりして、 少なからず焦りました。ただ微熱であったために身体を動かすことはでき、田舎の村で留まって寝込んでいるのも嫌だったので、自転車で走り続けてしまいました。幸いにもそうしているうちに治ったのですが、進行すると黄疸が生じたりするそうです。

●原因不明の熱病

 もう一つは腸チフスもしくはデング熱。なぜ「もしくは」なのかといえば、結局原因がはっきりとは分からなかったからなのですが、アフガニスタンからパキスタンに戻ってきたときに発症し、推定四十度の高熱と完璧な水下痢が続きました。食欲はまったくなく、ほとんど何も喉を通らず、立ち上がって歩き回ることはもちろん、座っているのも大変なほどでした。

 さすがにこのときばかりは病院へ行き、生まれて初めて点滴を打ってもらいました。熱が引いて動き回れるようになるまで、結局二週間くらいかかったのですが、体力は落ちてしまい、チャリダーとして完全復活するには、さらにしばらくかかってしまいました。

パキスタン/原因不明の熱病から回復も、激ヤセのとき
【パキスタン/原因不明の熱病から回復も、激ヤセのとき】

●マラリア

 私自身は罹患しませんでしたが、とても有名な病気としてマラリアに触れないわけにはいかないでしょう。マラリアは熱帯地方において、蚊を媒介して感染する病気であり、三日熱、四日熱などいくつかの種類があるのですが、高熱を繰り返し最悪死に至ることのある恐ろしい病気です。私はマラリア危険域に突入するスーダンから薬を購入し、危険域を脱したあとの南アフリカまで毎週一回服用を続けました。

 現在マラリア薬として一般的なのはメファキンと呼ばれる種類のものですが、これには、予防薬として毎週飲み続ける方法と、いざ発病したときに治療薬として飲む方法と二種類の使い方があるとされています。私はチャリダーとして病院などない田舎の村で発病することを恐れ、予防薬としての服用を選択しましたが、人によっては強い薬であるがゆえの副作用を嫌い、治療薬として携行していたようです。

 またマラリアは熱帯の熱病として知られますが、潜伏期間があり、注意をすべきは日本や欧州など非マラリア地域に出てきてしまってから発病する場合だといわれれています。ナイロビやケープタウンなどアフリカの大都市には立派な病院がありますし、地方都市の医者であっても、マラリア患者の治療には慣れてします。

 ところがたとえば日本のお医者さんが、どれほどマラリア治療に詳しいといえるでしょうか? 最初の段階でマラリアではないと誤診され、初期治療を誤ったせいで症状が悪化し、結局亡くなってしまったという例を、私は知っています。

●狂犬病

 チャリダーにとって、マラリア以上に警戒すべきなのは、狂犬病です。海外においては、日本のようにきちんとつながれておらず、放し飼いになっている犬が多くいます。田舎へ行けば、野良犬もいます。

 自転車で走っていると、猛然と追いかけてくる犬。中には目が真っ赤になって、よだれを垂れ流している犬、恐いのは咬まれることではありません、その犬が狂犬病に感染している可能性です。

 そう。いったん発症したら最後、狂犬病は致死率が百パーセントといわれています。万一咬まれた場合、三日以内に必ずワクチンを注射しなくてはいけません。繰り返しますが、発症したら最後、確実にあの世行きです! いざというときは、自転車を放り捨てても、都市に急行し、注射を打ってもらいましょう。

 なお、狂犬病には予防接種という方法がありますが、それについてはまた改めて説明いたします。

ザンビア/犬以外の動物からも感染する病気もあるので注意
【ザンビア/犬以外の動物からも感染する病気もあるので注意】

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 チャリダーにとって、病気との対決というのは、少なからず避けて通ることのできない道であると思います。体調や病気に対する耐性というのは個人差がありますから、同じ旅の経路を辿っても、全然平気な人もいれば、瀕死の大病を患ってしまう人もいるかもしれません。

 ただチャリダーが明らかにほかの旅人と異なるのは、普通の旅行者が少なからず大都市と観光地を結ぶ点と点の旅であり、いざとなればすぐに英語の(あるいは日本語の)通じる病院に駆け込むことができるのに対し、砂漠や森林の道に挑むチャリダーは、常にど田舎で発症するという危機を背負い込んでいるということです。

 パキスタンの西部を走っていたときに、私は例によって悪い水が原因で下痢になり体調を崩しながら自転車をこいでいました。休憩でしんどそうにしている私に、周りの人たちは「医者を呼ぼうか」と声をかけてきてくれました。いざというときは、誰かが助けてくれます。そんな世界の優しさを信じられない人は、チャリダーには向かないかもしれません。

 念のため。私は自転車旅行については、それなりの経験と知識がありますが、医学については素人です。ここに書いた話はあくまで旅の話として、より詳しい情報は、専門の本やサイトを御覧下さい。

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