チャリダー養成講座/第十二回 自炊に挑戦しよう
腹が減ってはペダルはこげぬ。自炊をするのに必要なものとは?
前回野宿について記述しましたが、野宿と切っても切れない関係にあるのが自炊です。チャリダーは何と言っても身体が資本。きちんと食べることは最も重要なことです。むろん野宿も自炊もせず自転車旅行を楽しむことはできますし、現地の美味しいもの珍しいものを食べるのは旅の大きな目的の一つでもあります。物価の高い国で節約したい場合は別として、自炊は補助的な手段くらいに考えておいたほうがよいかもしれません。
●宿の台所
ユースホステルや安宿の中には、宿泊者が自由に使える台所を備えているところがあります。設備は宿によって異なりますが、電気式のコンロだったり、お皿などの食器も使えたり、食材や飲物を冷蔵庫し保存しておいたりできます。
また、旅行者が集まれば、共同で料理を作ってみるのも楽しいものです。運がよければ、旅をしながら各国の料理を学んでいる料理人バックパッカーに出会うこともあります。
【宿で自炊/物価が高い国なら食費の節約にも】
●ブタンガス式コンロ
アウトドア用の携帯式コンロです。登山などで最も多く使われているのが、ブタンガス(あるいはイソブタンガス)を燃料としたコンロで、ガスの流出バルブを調節して点火するだけなので非常に便利で簡単です。ガスは専用のカートリッジ式になっており、アウトドア用品店で手に入ります。
世界を股に駆けるチャリダーにとって難点なのは、ガスカートリッジは可燃性のため飛行機に載せることは厳禁であり、またキャンプの盛んな欧米先進国以外ではまず入手の見込みがないという点です。日本ではEPIやイワタニといったメーカーのものが有名ですが、海外ではキャンピングガスなどのほうが一般的なようです。
参考までに、学生時代にカナダを走ったときは、キャンピングガス社のコンロを使用しました。最近も国内の登山などの際に活躍しています。
●ガソリン式コンロ
私が世界一周チャリ旅行で使用したのは、MSRと呼ばれるガソリン式の携帯コンロです。バルブを開けば気体のガスが出てくるブタンガス式のものとは異なり、ガソリンは液体ですから、熱し圧力を高めて気化させてやらなければいけないという、慣れれば造作もないのですが少し面倒な作業が必要です。
利点は言うまでもないでしょう。ガソリンは世界中で手に入ります。ガソリンスタンドへ行けばよいのです。
ちなみに本来は白灯油(ホワイトガス)を使うのが適とされています。ガソリンでも問題はありませんが、煤けて汚れやすいので時々洗浄が必要になります。
●コッヘル
日本語で言うなら飯盒でしょうか。個人用のものでたいてい大鍋と中鍋が二つ付いています。片方で米を焚き、もう片方で味噌汁を作ったり、炒め物をしたりできます。
【屋外で自炊/ブタンガス式コンロとコッヘル】
●万能ナイフ
十得ナイフとかアーミーナイフなどとも呼ばれます。コンパスやらドライバーやらピンセットまで付いている多機能なものもありますが、最低限ナイフと缶切り、栓抜きが付いていれば充分だと思います。
海外でキャンプをする。そのとき自炊で何を作るかはもちろん自由です。日本のものとは種類が異なる場合はありますが、お米はどこの国でも容易に手に入ります。醤油もたいがい入手可能です。キッコーマンが見つからないときは中国製の醤油で代替します。その他味噌やふりかけやカレールゥなどの食材になると、在住日本人が多い国や地域のスーパーでないと、なかなか手には入りません。
もちろん日本風の味付けにこだわる必要はありません。その国にしか売っていないような珍しい野菜や肉に挑戦してみるのもよいですし、レトルトはあまり見かけませんが、ときには缶詰に頼ってしまってもよいと思います。
正直いうと私は、野宿はしょっちゅうしていましたが、まともな自炊は、あまりしませんでした。一日走って疲れ果ててしまっていたことと、真面目に調理しようとする場合は、どうしても水や油が必要だったり、食後の洗い物が生じるからです。
主食はパンで済ませ、ビタミン不足は果物で補っていました。