コッカトゥー島、シドニーからフェリーで行けるもう1つの世界遺産
シドニーの世界遺産といえば、ほとんどの人がオペラハウスを思い浮かべるでしょう。でもそのほかにも市内に気軽に行ける世界遺産があるんです。シドニー湾に浮かぶコッカトゥー島です。タスマニアをはじめオーストラリア全土に点在する「オーストラリアの囚人遺跡群」、イギリス植民地時代の遺構が世界遺産に指定されています。1839年に刑務所が建てられたのがコッカトゥー島の近代史の始まり、のちに島の石材を利用して船渠(ドック)が建造されることで、豪海軍の造船所としての役割を果たしていくことになります。
シドニー中心部から公共フェリーで手軽にアクセス、オーストラリアの歴史が感じられる島の見どころについてご案内します。
目次
1.サーキュラーキーからフェリーの3番または8番で
2.見学順序は上部コースと下部コースの2段構造
3.第二次世界大戦で戦艦を建造したサザーランド・ドック
4.島を縦貫するトンネルも忘れずに歩いてみよう
5.カフェもありキャンプ場もある憩いの場としての一面も
1.サーキュラーキーからフェリーの3番または8番で
シドニー中心部からコッカトゥー島へ行く交通手段は船。世界3大美港の1つシドニーでは、地下鉄やトラムと並んでフェリーが公共交通の一角を担っているのです。コッカトゥー島へ行けるのはF3またはF8の路線。海上交通のターミナルとなるサーキュラーキーからの運航です。オペラハウスを横目に出港し、ハーバーブリッジをくぐって、海上からのシドニー高層ビル街の眺めも楽しみです。
ちなみにサーキュラーキーからの所要時間は、経路によっても大きく異なり10~30分。コッカトゥー島が終点となるF8よりも、F3線のほうが本数も多く時間も短めなので使い勝手がよいかもしれません。
2.見学順序は上部コースと下部コースの2段構造
さほど広くないコッカトゥー島ですが、島内は高低差があり見学ルートは意外と複雑です。大きく分けて上部コースと下部コースに分かれています。フェリーから下船すると、すぐにインフォメーションがあり、地図をもらうことができます。順路が記されていますので、まずはそれに沿って歩き始めるのがよいでしょう。テントが並ぶキャンプ場の脇を過ぎると分岐があり、まっすぐ進むと島の外周を歩く下部コース、左手の坂を上っていくと上部コースです。
上部コースを進むと高台に出ます。石積みの壁だけが残る遺構が残されている一方で、緑の芝生が広がり眺めの良いところです。平屋の建物がロの字型に並んでいるのは囚人居住区、そもそもオーストラリアがイギリス本土からの流刑地だった歴史を思い出させます。
古びた石組みの囚人区を過ぎると、トタン造りの廃工場的なエリアへ。船の設計所として使われていた一角です。島に連れてこられた囚人は、当初は岩で造られたサイロ(穀物貯蔵庫)で働いていましたが、やがて島で切り出された石材を使って、オーストラリア初の船渠の建設に従事することになったそうです。
3.第二次世界大戦で戦艦を建造したサザーランド・ドック
船の設計所を後にして下部コースへ下っていく途中、海鳥たちが巣を作っていたり、シドニーの高層ビル街の眺めがよいところがありました。そして海に面した一帯が工業地区。吹き抜けの体育館のような大きながらんどうの建物の中、使われなくなった古いタービンなどの機械が置かれて(展示されて?)いました。19世紀後半になるとコッカトゥー島の管轄は刑務局と公共労働局に分けられ、後者がドック拡大の中心となり、1890年には2万トン級の船舶を係留できるサザーランド・ドックが完成しました。オーストラリア海軍の船舶が建造されるようになり、最盛期には4000人以上が暮らし、第二次大戦の間はもちろん、戦後もしばらく稼働を続けたそうです。
4.島を縦貫するトンネルも忘れずに歩いてみよう
ざっとコッカトゥー島の主要な見どころを紹介してきましたが、下部コースにはもう1つ見逃せない場所があります。それは島の中央部の丘を縦貫して造られた2つのトンネルです。案内マップにはもちろん載っているのですが、入り口はさほど目立たず、うっかりしていると見過ごしてしまうかもしれません。岩を掘り進めることで造られたトンネル、2本あるうちの1つドッグレッグ・トンネルはその名のとおり途中で折れ曲がっているので、前方が見えずにちょっとした探検気分です。島の向こう側に行ける抜け道として、資材の移動などに利用されたそうです。
5.カフェもありキャンプ場もある憩いの場としての一面も
上部コースと下部コース、ひととおり歩いて回って、所要時間はざっと1時間くらいでしょうか。シドニー中心部からのちょっとした社会科見学という感じで訪れることができます。囚人が暮らしていたという負の歴史とは裏腹に、島にはカフェもあり、景色もよいところなので、半日ほどのんびりゆったりするのもいいですね。テントが常設されたキャンプ場があることからも、地元の子供たちの課外活動スポットとしても利用されていることがうかがえます。
コッカトゥー島のドックヤードがその役割を終えたのは1992年、意外と最近であることに驚きます。日本でいえば江戸時代末期から明治大正昭和を過ぎて平成の時代まで続いたコッカトゥー島、ぜひシドニー観光の1つのスパイスとして、加えてみてはいかがでしょうか?