ふねしゅーの日本探訪/其の陸 水天宮/安産祈願
多産安産の犬にあやかって戌の日、ではなかったけれど、水天宮へ
汗ばむ秋晴れの9月3日、 安産の神様として知られる水天宮を訪れた。 地下鉄の駅を降りると、都心のビルに囲まれて、 こぢんまりとした緑の一角がある。 腹帯の販売や祈祷の受け付けは長蛇の列。
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巫女さんが6人で対応していたが、 待ち時間はおよそ30分。 全員に妊婦さんバッヂを配布していた。 普段は30分ごとという祈祷が、 この日は混雑のため15分刻み。 1回あたり10数人が並び、 まとめて神主さんから御払いを受ける。
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形骸的であり商業的であると、 このような祭事を否定する人もいるだろうが、 都心の喧騒の中で、ひとときの静謐さがあった。 江戸時代から庶民の信仰心に支えられ、 幾千万のお産を見守ってきたであろう水天宮。 現在社殿は鉄筋コンクリート造りで、 地下には駐車場があり、車椅子用の エレベーターも据え付けられた神社だ。 祖先からの伝統を受け継ぎつつ、 現代流に改良されたあり方であるともいえる。 むしろその手軽さが若い活気を生んでいた。
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どんなに科学が進んでも、 人の生き死にだけは管轄外だ。 少子化が叫ばれ、また子供が犯罪に巻き込まれる 嫌な事件が多い昨今だからこそ、 命の大切さを考え、 人間の力ではどうにもならない部分を、祈る。 時代が移っても変わらない心を、 お腹の中の次世代にも伝えていきたい。
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