2001年９月の日記

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　　ふねしゅーの地球紀行
　　　　2001年９月
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２００１年９月30日

～パナマシティー
　　気がつけば９月末日。中米最後の国境越え。入国の際に出国航空券の呈示を求められ、持っていない僕はコスタリカに戻るバス券をダミーで買わされた。（コスタリカ入国においても原則は出国の証明が必要だが、特に何も言われなかった）。
　　サンホセからおよそ１７時間、左手に突然湾が広がっているような景色が見える。あれっと思って右を見るとそちらは海。はたとこれがパナマ運河だと気付く。
　　パナマの市街に着き、海沿いの旧市街を歩く。遊歩道から一方にはパナマ運河の防波堤、もう一方には湾を挟んで新市街の摩天楼、すぐ目の前の小さな浜では泳いでいる地元の子供たちがいた。
　　水平線の彼方は南米大陸だろうか。アラスカからつなげてきた旅が一つの区切りにきたことを感じた。

２００１年９月29日

フォルツーナ～サンホセ
　　昼過ぎに戻ってきたサンホセの街をぶらぶらと歩く。店先にはクリスマスの飾り付けなどが売られていて、いくらなんでも早すぎるだろうなんて思ったりする。
　　軍事費の分を教育費に充てているというコスタリカには他の中米諸国ではほとんど見かけられなかった本屋がしかもけっこうな規模であり、夜２２時発のバスまでの時間つぶしをさせてもらった。年次別に揃えられた子供向けの学習書をパラパラめくったり、世界地図を見つけて今後の計画に思いを馳せたりする。実際のところ発展途上国において世界地図を目にするというのは日本では信じられないくらい難しいことなのだ〔旅行会社の壁に大きなメルカトル図法が貼られているくらい）

２００１年９月28日

フォルツーナ
　　コパン以来熱はとっくに下がったが、どうもお腹の調子が優れず、休養。
　　１５時発で温泉と火山観光のツアーに参加する。温泉は水着着用だが日本人好みの熱い風呂があり、熱帯植物の生い茂る庭の彼方にアレナル火山の雄姿も望め、露天風呂としての質は上々だった。一緒にいたスコットランド人の一人は熱い風呂には入れず、別のぬるいプールのほうにずっといた。
　　日が落ちて、火山の展望台へ。暗闇にマグマの噴出する赤い光、頂上からの噴火とそれに伴う轟音も体験できる。
　　ただ今回のツアーで何より印象的だったのは、蛍である。展望台の周りあちこち、点いては消え、点いては消える数十匹の蛍たちが気ままに舞っていた。なんとも気の利くツアーで振舞われた缶ビールを飲みながら、何年ぶりに蛍なんて見るのだろうと考える。コスタリカの自然の豊かさに敬服させられた一時だった。

２００１年９月27日

サンホセ～フォルツーナ
　　コスタリカは自然保護に力をいれている環境国家でもある。ケツマール島の観察ほか魅力的な国立公園の類は多いが、すべてを回る気もせず、温泉のあるというアレカレ火山国立公園に絞って訪れてみることにした。
　　サンホセの中では治安の悪い地区にあるバスターミナルから４時間以上揺られ、フォルツーナの町へ。小さな町に宿、旅行代理店、土産物屋がドル表示で並び、完全に観光のための町になっていた。
　　ちなみにコスタリカの通貨コロンは１円が約４コロン。１０００コロン札、１００コロン玉などあって、桁の大きなお金の単位が妙に懐かしい。安い食事が６００コロンくらいと、そのまま円に置き換えると丁度物価が釣り合う感じだ。

２００１年９月26日

　マナグア～サンホセ
　軍隊を持たない非武装中立国のコスタリカ。そのぶん入国審査はいくらか厳しく、バスの乗客全員荷物を横長のテーブルにずらりと並べ検査を受けた。僕と隣にいたヨーロッパ人は割りと簡易だったが、人によっては衣類をかき分けられ、かなり厳密だった。
　　そんなコスタリカの首都サンホセは他の中米に比べると、”マシ”な治安で、日が暮れてからも店の灯りは明るく、歩行者専用の買い物道路などは先進国ぽさを漂わせていた。
　　日本の第九条は建前だけになってしまっているが、平和ボケと言われつつも安全で豊かな国に発展したのは事実であり、ホンジュラスやニカラグアが可哀想に思えるほど、コスタリカは平和の恩恵をうけているように思えた。

２００１年９月25日

　マナグア
　湖に沿い熱帯雨林に埋もれるように広がるマナグァ。外資系のホテルや銀行などのビルがかろうじてポツポツと建っている。ただのどかで治安は良いのかと思えばそうではなく、物乞いは多いし、今年の６月には日本人が撃たれる発砲事件も起きているらしい。
　発砲事件を聞いたのは日本大使館。若い係員は親切で朝日と読売を束で持ってきてくれた。以下、適当に拾った記事の抜粋（要約）。
「アメリカ人は報復のことを revenge (復讐)ではなく punishment(処罰)と言っている。この自分たちに絶対の正義があるという考え方には疑問を感じる」（読者投稿）
「テロ当日報復に反対だった人は（全米の）28%。それが４日後には15%に半減した」（社会面記事）
「今、戦争に行けと言われれば喜んで行く」（アメリカ人の少年）
「米議会、上下両院あわせたった一人下院の女性議員だけが報復行動に反対を表明した]（国際面記事）
「第三次世界大戦はすでにはじまっている」（週刊誌の広告））
「テロを起こしたのはオウム真理教のアサハラのような人。日本人がみなサリン事件を起こしますか？」（在日イスラム教徒　）
　「日本は米、イスラエルそしてアラブ諸国からも信頼を得ている。真の橋渡しができるのは日本しかない」（在イスラエル人教授）
　 [国連会議の場でアフリカ諸国などから欧米に対し、奴隷貿易や植民地支配への謝罪を求める議題が出された。結果的に '遺憾' という表現で終わってしまったとはいえ、このような一歩が踏み出された意味は大きい」（天声人語）
9/11の天声人語とはつまりくしくも、テロ事件発生の当日である。　

２００１年９月24日

テグシガルパ～マナグア
　メキシコからパナマまで中米各国をつないでいるTICAという国際バスがある。冷房付きの立派なバスはアメリカのスクールバスのお下がりにばかり揺らされていた身体には久々心地よい。パスポートを預けての国境手続きまで代行だった。
　このバスで日本人の旅行者に会う。仕事の合間の休みでホンジュラスからコスタリカまでと話していたが、いわゆる旅人と会うのは随分久しぶりな気がした。テロ事件の日本での伝えられ方など聞く。
　国境を越えると道路は途端にガタガタ、橋の架け替え工事がやたらに目立ち、のどかで貧しい田園風景のまま、首都マナグアに着いた。これで首都かと思わず拍子抜けしてしまうほど建物も人も少なく、緑ばかりが多くて閑散としていた。

２００１年９月23日

サンペドロ・スーラ～テグシカルパ
　首都テグシカルパは狭い盆地に位置し、閉塞状態にあり、経済的基盤はサンペドロ・スーラに移されつつある、という話。とはいえ人口規模にして妬く３倍。それなりの賑やかさと風格があるだろうと期待していたが、この街の首都らしさは、少なくとも僕には、治安と雰囲気の悪さだけだと思えた。
　日曜日だったせいもあるのかもしれないが、中心部も都市街もうらさびれた感じ。インタネットカフェは２４時間営業で驚いたが、ピザハットやバーガーキングなどのファーストフードあるいは中華系の飲食店ばかりが目立ち、つまらない。唯一多くの人々が集まっていたコマヤエグラ地区の市場界隈は、今まで見てきたあらゆる国と町の中で（引き合いに出して申し訳ないが、地元の人がゴミcountryと自嘲していたバングラディッシュよりも）最もゴミが路上に散らかり臭く汚く、関わりたくないやばそうな人たちもチラホラと見かけた。
　ホンジュラスは周辺諸国と異なり、内戦を経験しておらず社会基盤は整備され治安も比較的ましとされているが、いささか疑問に感じてしまった。

２００１年９月22日

コパンルイナス～サンペドロ・スーラ
　微熱にめげず移動。首都のテグシガルパまで行くつもりだったが、体調と時間を考え第２の都市サンペドロ・スーラで泊まる。外資系の店舗、屋台などがにぎやかに並び、わりと華やか。カリブ海が近いせいか黒人系の人々もちらほらと見かける。
　暇つぶしで足を運んだ人類歴史博物館はマヤ遺跡の出土品、その文化の解説（生贄様式の行われ方や間や文字による書物など）が充実してわりに面白かった。英語の説明書が置かれていたところが二重丸。
　昼間は居心地の良い街に思えるが、夜は最悪。何の音だか分からないが甲高いサイレンのような騒音がずーっとうるさくてなかなか寝られなかった。

２００１年９月21日

コパンルイナス
　５畳ほどの部屋にベッドが2つ。斜めに傾いた天井の真ん中に裸電球がぶら下がっている。片方のベッドは荷物置き場、もう一方に寝転がっている目の前に紐に掛けた洗濯物がぶら下がっていて湿った匂いだ。
　頭が重く熱っぽくやる気がしない。
　体調が優れないとせっかくの遺跡観光も気怠くて、足を運ぶだけは運んだがメモなどとる気もおこらず、ぼーっとマヤ文字の彫られた階段など眺め、昼頃には帰ってきてしまった。
　インターネットでテロ事件後の情勢など見ていると、熱のせいか弱気になる。ローマで自転車を買いなおし、アジアを東へと考えていたが、果たして通り抜けられるのだろうか。南米へ下るという]選択肢もあるが、いっそ予算を残し、一旦帰国の道をとるか、そんなことすら思い浮かぶ。
　二度目の読み返しとなる文庫本を読みながら、結局はひとまずパナマまで行って考えようと、思考は堂堂巡りを繰り返す。

２００１年９月20日

サンサルバドル　～　コパンルイナス
　エルサルバドルからホンジュラスへまたまた国境越え。36.5 コロンが　58 レンピーラに換わる。エルサルバドルの「コロン」はコロンバスの意でお札にはコロンバスの絵が描かれている。ホンジュラスの「レンピーラ」はスペインに抵抗した先住民の長の名前。グァテマラのお札にはマヤ式の数字が印刷されている。国のお札というのは、その国の自己認識（アイデンティティ）みたいな部分があると個人的には思っているのだけど、そう考えるといろいろ興味深い。
　昨日一日エルサルバドルにいて驚いたのは、自動支払機でお金をおろすとコロンではなく米ドルで引き出されること、スーパーやガソリンスタンドでは、ドルとコロンの二拾表示がされ、市中一般に米ドルも流通しているということだった（ぼくの知るところカンボジアも同様、パナマは自国通貨がそのまま米ドルになっている）。
　ホンジュラスに入国し。バスを２度乗り継いだら手持ちが７レンピーラだけになり、最後のバス代が足りず、米ドルで払えるかを訊いたら簡単に了承された。
　特に発展途上国において最終的に頼りになるのは、クレジットカードでもトラベラーズチェックでもなく、米ドル現金とりわけ１ドル札だ。
　日本は５００円玉なんて高額硬貨を発行しているのに、アメリカは１ドル札なんていう[安い」（日本やアメリカの経済水準からして）額面をお札にしている。今日ふとその理由が判ったような気がした。
　つまるところアメリカは自国内の利便性よりも外国（発展途上国）での流通性を重視して、わざわざお札にしているのではないだろうか、と。両替はたいていコイン不可だから、お札でないと具合が悪い。その国に米ドルが流通しているということは少なからず経済的にアメリカに従属しているということ。旅行者にとって便利な１ドル札はアメリカの世界的な経済戦略の賜物なのだ。たぶん.......。

２００１年９月19日

サンサルバドル
　午前中、郊外のホヤ・デ・セレン遺跡を訪れる。この国では市バスの中でも銃を突きつけられての強盗があるとの話だが、乗った感じ、そこまでの緊張感はなかった。
　遺跡は別名「中米のボンベイ」と呼ばれ、火山噴火によって火山灰に埋もれ滅んだと言うマヤの農村の跡。神殿やピラミッドといった壮大にものは一切なく、素朴な庶民の住居跡だけが残されている。そういう意味では見応えに欠けるのだが、出土品として展示されていた器類にはマヤの字や絵が描かれ、マヤ文明の古さと深さが感じられた。
　午後はヨソイキのボロい格好で中心街に挑む。真新しく派手な壁画に飾られた教会、人も物もギッシリと路地を埋め尽くす屋台・市場、そして店先、街角至る所で銃を構えている警官。建物の壁に「VIVA　OSAMA　BIN　LADEN」なんて落書きもあった。ただ一番驚いたのは、CDを並べている屋台の前を歩いたいたら突然日本語のアナウンスが聞こえてきたこと。一瞬、耳を疑ったが、良く聴いてみるとCDのレンズクリーナの説明の声だった。
　中心部からやや離れ、一転して富裕層しかいない巨大モール、メトロ・セントロ、中米最大規模、国を間違ったかのような、と「地球の歩き方」には書いてあるが、たしかに、綺麗、立派、快適、安全（たぶん）で同じ国に生まれてきても、住むところ、生活する場所はハッキリ分離されているのだなと感じた。
　宿の老夫婦、おじいちゃんの方がさながら田舎の元校長先生といった雰囲気で日本人そっくりなのだが、僕に一緒に日本に連れていってくれ、なんて話していた。

２００１年９月18日

パナハッチェル～サンサルバドル
　エルサルバドル。この国の印象は内戦、今年の初めにあった地震災害そしてとかく治安が悪いとよくないことずくめだ。
　国境ですかさず集まってくる両替屋。そこまでするかと半分諦めにも似た呆れ方をしてしまったのは、彼らがなんと細工した関数電卓を使っているということだった。個人の両替屋といえばたいてい２割くらいレートが悪かったりとか、紙幣を数えるときにごまかして少なく渡す、というのが大体のところだが、彼らの電卓はなんと２７割る１．１２という計算で１６．という答をはじき出すのだ。（電卓をよこさせて自分でも叩いてみた）。他の両替屋の電卓もみんなそうだった。ただ、結果としてバスに乗り遅れそうなドサクサでお金のやり取りをしたら、なぜか２０コロン渡してくれ、僕はＱ１抵抗してＱ２６しか渡さず（つまり２７割る１．１２＝２０という計算式）もちろん損はしているのだけれど、なんとなく面白くてあまり腹立たしい気分にはならなかった。
　バスは途中でパンク、３０分ほどの作業の後、乗客全員前の方に乗って走る。サンサルバドルに着いたのは夕暮れ直前の１７：３０，宿は近かったけれど、ちょっとびびった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

２００１年９月17日

チチカステナンゴ～パナハチェル
　「世界一美しい湖」なんて派手な形容詞のついいたアティトラン湖。その周囲にはいくつかのインディヘナたちの村がある。拠点となるパナハチェルの町から湖を船で渡り、マヤ系カクチケル族の人々が暮らすサンチャゴ・アティトランを訪れた。
　この村では酒と煙草が好きというマシモシと呼ばれる神様が信仰されている。狭い路地を入った普通の民家みたいなところに廟があり、たくさんのローソクと色とりどりのテープに飾られ葉巻をくわえている木の像が祀られていた。
　何気なく足を運んだ民芸の織物屋でそこの家族と仲良くなる。同じ外国人旅行者でも異なる文字、異なる宗教を有する日本人は（中には日本人は英語を話し、キリスト教徒だと思っている人もいるようだけれど、それは単にたぶん、彼らの世界観がスペイン語か英語そしてキリスト教という範囲で閉じてしまっているからだろう）わりと興味を引かれやすい。１３：３０の船を逃し、帰りが１６：３０になったこともあって、紙に五十音表を書き、母音と子音をアルファベットで示し、仮名の仕組みを説明したりする。中学生くらいの長男はさすが頭が柔らかいのか、ぎこちなくもア・カ・サ・タ・ナと読み上げていた。他に簡単な会話も教えたので、ひょとすると明日以降この村を訪れる日本人は「イラシャイマセ」なんて日本語で呼びかけられてしまうかもしれない。

２００１年９月16日

チマルテナンゴ～チチカステナンゴ
　チチカステナンゴの町外れの丘に、黒い石像を祀る祭壇がある。パスカル・アバフと呼ばれるマヤ系キチェ族の神様だ。規範的には日本のどこにでもあるお地蔵さんくらいの小さなものだったが、たき火が炊かれ、煙の出る缶を振り動かすおじさんがいて、経文のような言葉が唱えられていた。（なぜか十字架もいくつか建っていたけど）
　町の中心にはサント・トマス教会という外観はカトリックの教会がある。正面の石段にはやはりたき火が炊かれ、中へ入ると薄暗くたくさんのローソクのゆらめきと香草くささと黒く煤けた内装が実際には異質の宗教が融合され活きていることを示していた。
　教会の隣では、マヤの暦法を表すカレンダーやキチェ語で書かれた（文字はアルファベット）キリスト教の本が売られ、売っていたおじさんはハポンハポンと言いながら僕にキチェ語での１２３の読み方を教えてくれた。
　チチカステナンゴの町は色鮮やかな民族衣装、民芸品が競演する大規模な市場で有名だ。それ以上にマヤの宗教や言葉が生きている一側面を見られたことの方が印象的だった。グァテマラはマヤの国であるというがまさにその通りで（先住民）という呼び方がむしろそぐわない、そんな気さえした。

２００１年９月15日

チマルテナンゴ・アンティグア
重度の二日酔いで一日中だるい。
　独立記念日の今日、中央公園一帯では、楽隊や仮装隊によるパレードが行われ、外国人旅行者を含め多くの人々でごったがえしている。パレードは民族衣装姿の一団もいたが、鼓笛隊の演奏は西洋調で、ちょっと期待していたいい意味での無秩序差、お祭り騒ぎはなく、割と平凡な気がした。
　公園の隅でボーとしていると、親に連れられ買ってもらったオモチャで遊んでいる子供、そんな富裕層相手に風船やら民芸品やらを売り歩いている子供・・色々見える。
　"Necesito dinero para comer=食べるためにお金が必要です”１個数十円の売り上げで原価を引いて、どれだけのトルティージャになるのか分からない。この街には特に多い’金持ち’の外国人の存在を彼らがどう理解しているか分からない。グァテマラ（だけでなく中米諸国に共通の日付けだが）の独立を祝うこの日の意味をどう思っているのか分からない。
　ただ、この貧富の差が結局は社会を歪め治安を悪くさせている、そのことだけは痛いほど分かるような気がした。
　夕闇に包まれる午後６時すぎ、カテドラルを前に、大勢の群衆による国歌斉唱が行われた。僕にアクセサリーを売りつけた少女がはたして歌っていたかどうか、僕は知らない。

２００１年９月14日

アンティグア
　スペイン語学校最終日、なんとエミセルが昨日交通事故に遭ったとのことで、急遽先生が変わる。たった５日間で過去形のさわりまで進んだが、語彙がさすがについていかない。日本の英語教育は単語暗記の詰め込みだからダメと言われるけど、大学受験で詰め込んだ語彙力というのは（けっこう忘れているけど）いざ海外で割と役にたったりもしている。
　独立記念日前夜の今日、学校でパーティーが開かれた。各自持ち寄りのビール、ロン、スナック類、トルティージャなどがテーブルに並び、サルサ音楽がかけられる。飲んで踊るというのは最も酔いが回りやすい組み合わせだ。スペイン語学校といっても生徒はほとんど欧米人で彼らとの会話はだいたい英語になってしまう。
　東洋人は自分だけかと思ったら韓国人のなぜか自称ロミオというおじさんと、彼と同じホームステイ先という日本人の女の子がいて、アジア人３人で二次会へ行く。彼女は来春テレビ局への就職が決まっていて、来年のワールドカップ含めたスポーツの担当に関わりたく、そのためにスペイン語を身につけようとグァテマラに来たのだという。その目的意識の高さが少し羨ましかった。

２００１年９月1３日

　チマルテナンゴ・アンティグア
　毎朝混み混みのバスに揺られて通学している。出発前のバスはまだ空いていて菓子売り、新聞売りなどが商売にやってくる。バスの外では乗務員が「アンティグア、アンティグア！」とタクシーの呼び込みみたいに声を張り上げている。
　やがてバスは発車、ところどころ停まって客を乗せすぐに満員になる。たぶん運転手の趣味だと思うが、その日によって違う音楽が音量だけはいつも大きめで、ガンガンに鳴らされながら走る。たまに知っている英語の曲がかかると普段洋楽なんか聴かないくせに、なぜかちょっぴり懐かしくなる。
　前あるいは隣の人が新聞を広げていたら、そっと覗き込む。「２１世紀最初の戦争」「新真珠湾攻撃」「我々は戦争に勝つ」なんて太字の見出しと燃えさかるニューヨーク高層ビルの絵といつも同じ指を立てたポーズのビン・ラディンの顔写真が目立つ。
　山あいの道を下って、前方に富士山に似たアグア火山の姿が見えてくると、まもなくアンティグアの町だ。共同洗濯場で女性たちが洗い物をしている姿なんかも見える。

２００１年９月1２日

　チマルテナンゴ・アンティグア
午後手紙と写真を送ろうと郵便局に出かけた。けっこうな重さになったのでＱ１５０という値段は仕方がないにしても、なんと切手が貼りきらないからその小さな封筒ではだめだという。これにはさすがに驚嘆した。つまり、グァテマラでは最高でもＱ１の切手しか発行されておらず、Ｑ１５０となると１５０枚の切手を貼らなければならない。しかし、どうがんばって重ねて貼っても（切手の額面を表す「１」は見えるように少しずらして）僕の用意した封筒の面積では足りないというのだ。
　足りないのは封筒の面積ではなくてこの国の仕組みのほうだろう、と思わず言いたくなったが、つたないスペイン語力では"porgue=なぜ？”しか言えず、写真は別の国から送ることにして諦めた。わざわざそのために新しい封筒を買ってくるのも癪だし、だいいち１５０枚も切手を貼るのに何分かかるか、その面倒くささだけで嫌になった。

２００１年９月1１日

　チマルテナンゴ・アンティグア
　旅客機がニューヨークを攻撃した　。
　大事件の第一報はこんな形で僕の耳に飛び込んできた。スペイン語学校の庭での授業中、柵越しに隣家の老婦人がエミルセに話しかけてきた。その要点を彼女が僕に辞書を仲介として教えてくれたのだが、「戦争」「塔」「ニューヨーク」「死傷者」そんな見出しのような単語ばかりが並ぶ。この時点で、実はハイジャック機であったこと、アフガニスタンのビン・ラディンが焦点とされていることなどの情報は分からず、正直なところ僕はパレスチナから大西洋を越え、アメリカの防空網を破り、どうやってニューヨークまで達せたのだろうとそんなところに疑問と驚きをもってしまった。
　とにもかくにも最初に辞書で示された（それ以来すっかり覚えてしまったGuerra＝戦争という単語に個人的には今後の旅の行方が心配になった。ニューヨークであれば当然日本人で仕事をしている人や旅行者も大勢いただろうとも、ふと思った。

２００１年９月10日

チマルテナンゴ・アンティグア
　スペイン語学校の初日、バスが思ったよりも遅くて遅刻寸前だった。
先生はエミルセという女性で英語はあまりできず、ほとんどスペイン語でのやりとりになる。２０歳と言っていたが、はじめは同じ歳ぐらいに見えた。早婚のグァテマラ人は１５歳を過ぎると老けていくらしい・・・・・
「あなたの名前は何ですか？」「今何時ですか？」などの基本会話から。スペイン語は発音は楽なのだけれど、動詞の活用がやたらに複雑。形容詞にまで性別変化や複数形があって大変だ。
　帰り際、先週の金曜に宿で会った日本人に会う。僕から見ると（聞くと）かなりスペイン語が話せているように思えたが、きくと３週間らしい。ちょっと感心する。

２００１年９月9日

チマルテナンゴ（０ｋｍ）　現像に出していた写真を受け取って、手紙を書いて、借りた本を読んでちょっと散歩したけどすぐ飽きて戻ってきて、いつの間にか夜になっていた。
　西山さんに借りた本は先生向けの、こう教えれば子供に興味を持たすことができる、てな内容のものが多いのだけれど、これが意外と面白い。小学校の科目でも理科の生物とか図工や家庭科あたりの単元になると、知らない（忘れてる？）ことが少なからずたくさんある。
　チマルテナンゴはそこそこの規模の町だけれど、歩いていて本屋というものが見つからない。アンティグアでは数軒見つけたが、半分（以上）旅行者向けという感じがした。
　江戸時代すでに町人の間では寺子屋や読書の習慣が定着していた日本人の教育水準というのは、そう考えるととても高くて、逆にいえば町に本屋もないグアテマラの発展はまだまだ長く遠く時間のかかることのように思える。（むろんグアテマラにも学才のある人はいる、念のため）

２００１年９月8日

チマルテナンゴ・アンティグア（０ｋｍ）
　大家さんの家の敷地はとにかく広い。西山さんに言わせると大金持ちで、彼女の兄弟や親戚（大家さん自身は独り身）の家が隣、そしてそのまた隣へと広がっていて、全体的にはかなりの敷地だ。
ともあれその隣の隣ぐらいのところに暮らす弟家族の長男（１５歳）が今日アンティグアでカトリックの洗礼式を受けるということで、僕もその式と祝いの会にちょこんと混ぜてもらえることになった。
　場所はアンティグアのメルセー教会という（地球の歩き方にも見どころとして載っている）大きな教会。５００人以上はゆうに座れると思しき席の全てが埋まっていて、左右には立って見守っている人も大勢いた。前のほうに座っているのが洗礼を受ける主役の子供たちで、パドリーノ、マドリーナと呼ばれる洗礼親とともに手にロウソクを持っている。祭壇に向かって左側には白衣姿の青年たちによる楽団が聖歌を演奏し、正面では真っ赤な法衣をまとった年配の司教が存在感を持っていて、なんとも厳かな空気。異教徒かつキリスト教嫌いの僕がこんなところにいていいのか、とすら思う。カメラを手にうろついているお父さんたちの姿がちらほらあって、少しだけほっとする。
　司教、神父、何人かの説教や挨拶、そして一人一人が呼ばれ、司教の前で頭をさすられながら会話を簡単に交わす。そのあとまた何人かのお話があって、音楽もいくつか演奏されて、ときどき教会の人々全体が（神の名か何らかの言葉を）唱和し、そして式の終わり、また一人一人の子供たちが司教と対面し、クエルポと呼ばれるもの（キリストの肉体の一部とされているらしい）を一匙ずついただいていた。
　夜はチマルテナンゴに戻り、家の中庭でパーティー。とにかく家族親類が多いようで大人子供会わせて５０人以上は集まっていた。グアテマラにおけるカトリックの強さと親類の結びつきの強さ（パーティーなどは上流階級だからこそ成せるのだろうが）をしみじみ感じさせた。　　　　　　　　　　　　

２００１年９月7日

アンティグア～チマルテナンゴ（０ｋｍ）
　昨日の夜同じ宿にいた日本人と韓国人、彼らが互いにスペイン語で意志の疎通をしているのを見て、少し羨ましくなった僕は、とりあえず１週間だけ（それだけではあまり意味がないことも分かっているが）スペイン語を学んでみることにした。正直なところ、その間には今後の方向性も決まってくるだろうという気持もあった。
　午前中何軒か見学すると料金の安いところ、しつこいぐらいに仔細な説明をしてくれるところ、やたら大勢の学生や教師で賑わっているところ、インターネットや洗濯サービスなどが付いているところ、と様々だった。カリキュラム内容がしっかりしていそうで、かつ立地的にスペイン語学校密集地帯からやや離れているせいか、料金が安いDe La Fuenteという学校に決めた。
　それにしてもよく降るのは雨。ここ数日毎日必ず降っている。

２００１年９月6日

　チマルテナンゴ～アンティグア（０ｋｍ）
　スペイン語学校に２週間通うつもりでいたが、その気持ちがこの２日間で薄れた。とはいえ、一応アンティグアへやってくる。この町はかつて中米全体を管轄するグァテマラ総督府が置かれていた古都で、３つの火山を望む美しい街並みである、などと本には書いてあるが、曇って山は裾野しか見えず、街路も地震で壊れた箇所が目立ち（その廃墟もまた観光的にはウリのようだが）民芸品市場に並ぶ民族衣装のウイピルなどは確かに綺麗だけれど、グァナファトなどメキシコの諸都市のほうがずっと素敵だったように思ってしまう。
　旅行社を見つけては思わず立ち入ってローマやりスボン行きの値段を尋ねてみたりした。

２００１年９月5日

チマルテナンゴ（０ｋｍ）
　昨日の記憶を引きずっているというか、自転車を失った喪失感で気怠い一日を過ごす。今後の旅の進路変更について、昨夜はずっと考えていた。中南米への興味と意欲の低下もあるが、全体の日数と予算を考えた場合、このまま予定通り南米へ下り、アフリカをも回った場合最も楽しみにしているアジアの日程が圧迫されてしまうかもしれない。仮に全大陸回れたとしても、一箇所一箇所が薄っぺらくなってしまうかもしれないという懸念がふつふつと増してきた。５月下旬にアラスカに入り、８月末でメキシコっを抜け、年末までにアルゼンチンへ至り年明け１月には大西洋を越える。１年以上の長期旅行にもかかわらず、なぜか時間的に押されている感覚が実はメキシコを走っているときからあった。メキシコの地図を広げてみると、その走った範囲の短さに少なからずがっかりもした。
　この旅を通して自分は何をしたいのか、何をしたくて旅に出たのか。
　その本質的な問いかけに明瞭な答が出ず、戸惑う自分がいる。
　初心に返ると、そもそも会社に勤めていた頃に半分冗談で言っていたのは「ユーラシア大陸横断」だった。ただ予算や日数的にもう少し色々行けそうだと考えると段々欲張りになって、アメリカ大陸やアフリカにも行って世界一周にしてやろうなどと風呂敷が大きくなっていったのだ。
　残り１５０万余りの予算と一年余りの日程を全てユーラシアに充ててもいいのではないか、なんとなくその考えに辿り着きつつある。

２００１年９月４日

　サンタ・エレーナ　ーー　グァテマラ・シティ　ーー　チマルテナンゴ（０km）
　不気味な笑い声のような感覚と、震えていうことをきかない自分の右腕の光景がはっきりと脳裡に焼きついている。
　サンタマレーナからの夜行バスは予期していたよりも早く、まだ暗い午前４時すぎのグァテマラ・シティに着いた。今思うと、ターミナルの中でじっと夜明けを待つべきだったのだろう。僕はバスターミナルの隣、２４時間営業の売店の前で、自転車組立を始めた。自転車組立を終えてから一休みし、明るくなるのを待って、チマルテナンゴへ向かえばいいと考えていた。夜の通りに売店やホテルのネオンがいくつか散らばり、客引きに忙しいタクシーの運ちゃんたちや、売店で飲み物などを求める人、そして確かにただフラフラしているような人たちもいた。僕は売店の明かりの前で、荷物に注意し、まわりに神経を張りながら、自転車を組み立てた。作業が一段落し、サンタ・エレーナで買い込んでいたパンとジュースで一服しようと、ビニール袋に手を伸ばそうとしたときだったと思う。売店側建物の壁側を向いていた僕の後頭部に鈍い衝撃が走り、火花が目の前で散った。
　その刹那、意識が飛んでいたのか、後付けのニセモノの幻聴記憶なのか分からないが、奇妙な笑い声の聴こえたような気がした。
　数瞬おいて　’やられた’　ことをおぼろげに認識しながら、僕は振り向き「なにすんだよ！」と日本語で叫んだことを憶えている。視覚の定まらない中、向こうに逃げていくような人影と、まるで自分のものではないかのように震えて自由にならない自分の右腕を見た。
　もし倒れて完全に意識を失っていたら全てを取られたかもしれず、逆にもう少し平気で下手な反撃をしていたらさらに殴られていたのかもしれず、結局のところ相手の人数すら分からない。大きなザックの無事を確認し、小さなザックの無事を確認し、腰のウエストポーチをズボンの下に隠した貴重品の部維持を確認し、そして自転車の消えていることに気付いた。
　周りは決して無人ではなく、売店の店員も、ほかに何人かの立ってただこちらを見つめている人たちも冷ややかかつ無関心で、それがまたこの街全体の病裡を感じさせた。
　実は一人だけ怪しいと後になって疑っている人物がいる。自称ロシア人で英語を話し、この国の人間は危険だから気をつけろと、自転車を組み立てている途中の僕に話しかけてきた男。もちろｎ僕は多少の警戒心をもって会話を受け流していたが、この自転車はいくらだと聞かれ、４００ドルくらいだと答えたことを覚えている（自転車の値段を聞かれることじたいはしょっちゅうで、メキシコでも幾度となく問われ、僕はたいてい、実際よりも安く答えることにしている）。自称ロシア人のその男は、僕がやられた後にまた戻ってきて、だから危ないといったろう、俺はこの国の奴らが大嫌いなんだ、などと言いながら、さすがに錯乱気味の僕をバスターミナルの中に連れ、ちり紙を差し出してくれたり（出血を拭うため）ターミナルの受付で電話を借り病院をさがしてくれたりと親切ではあった。
病院は自分でもあったてみたが早朝すぎてうまくつながらず、また頭の痛みもさほど深刻ではなかったことから（冬にスノーボードで転んだときのほうがむしろ痛かった。）僕はまもなく周りが明るくなるのを待って、バスでチマルテナンゴへ向かうことにした。
　チマルテナンゴには学生時代の後輩庄司有希の友人で青年海外協力隊で来ている西山さんとそのホームステイ先である大家さんのフリヘッタがいていきなり２人に迷惑をかけつつも助けをかり、病院や警察を回った。
　怪我は軽傷でタンコブと首がいくらか張る程度。自転車以外に盗られたのは、合羽、工具、洗面用具ぐらいで歯ブラシやひげ剃りを補充すれば旅は続行できる。自転車がなくなったことで旅は身軽になる。
　でもやっぱり６９４０ｋｍで止まってしまったメーターの数字が動かないことがとても悔しい。あるいはヨーロッパあたりで再び自転車を買うことも選択の一つだろう。
　推定１年後アジアを日本目指して東進しているころはきっと今日の事件もまた旅のネタとして笑いとばせるようになっていることを願って。　

２００１年９月３日

　サンタ・エレーナ　→　ティカル（０km）
　ティカル行きのバスは５時発と７時半発があってホテルまで迎えに来てくれる。７時半を予約したはずなのになぜか５時過ぎに起こされ、結局すぐに仕度をしてそっちに乗った。
　マヤ中興期、８世紀ごろに最盛を迎えたといわれるティヤル王朝は鬱蒼としたジャングルの中、かなりの広範囲に都市の跡が広がっている。一つの神殿からやや離れた別の寺院跡まで行くのに、アップダウンもある小道を１キロほど歩かなければいけなかったり、朝靄と高木にさえぎられて神殿の頂部が下から見えなかったり、いざ１５０段以上の階段を上って神殿に登ると一面のもやで視界が効かなかったりと（時間がたって晴れた）、文化的な遺跡観光というよりはちょっとした登山でもしているかのような気分だった。実際ティカルは複合遺産（文化遺産＋自然遺産）として世界遺産登録されているらしく、高木の梢に止まる鮮やかな黄色の鳥や、猿の一種か分からないが樹上生活をするアライグマにも似た動物を見かけることができた。
　もちろん点在する神殿群の容姿もまた鮮やかで、テオティワカンやチチェンイツァのピラミッドを富士山型だとすると、傾斜が厳しく垂直に反り立つ印象のマッターホルン型、おおげさにいうと密林の中の摩天楼という風格だった。今まで見てきたアステカ・マヤ系の遺跡の中では一番である。

２００１年９月２日

　サン・イグナシオ　→　サンタ・エレーナ（１１２．３６km）
　日本出発から１００日目、５ヶ国めグアテマラに入国を果たす。
　山間の小道に売店が並び、両替商が大勢いて、そして国境の事務所がある。わりに行列している出入国審査、外国人には現地の人には課せられない出入国税を要求される。グァテマラ側の入国で３５Ｑ（ケツァール）の入国税に対し５０Ｑ札で払おうとしたら１０Ｑ札はあるけど５Ｑ札の釣りがないといわれたのには驚いた（結局５０Ｑ＋５Ｑ札を出し、１０Ｑ札２枚の釣りをもらったので損はしなかったが。ちなみに１＄＝８Ｑぐらい、５Ｑは１００円玉より安いのに、だ）。
　そして国境からしばらく２５㎞ほどは未舗装の砂利道が続き、パンクもまたした。道が舗装になったときは安堵したが、代わりに空模様が怪しく、空の４分の１が青空、４分の３が黒雲で稲光もするという天気で、しばしスコールにも降られる。道なりに村落は続き、馬や牛のほか、たまに豚も道を横切っていた。人種が多様だったベリーズから一転してマヤ系の衣装、褐色の肌の人々ばかりであった。

２００１年９月１日

　ベリーズ・シティ　→　サン・イグナシオ（１２５．０km）
　実はチェックイン時にホテル代を払っておらず、このまま早朝に発つと踏み倒せるぞと耳元で悪魔の声が囁いたのだが、雨がふったときに洗濯物を取り込んでくれたりと宿のオバさんが親切だったこともあり（そうでなくとも払うべきだが）、ちゃんと払う。
　今日はグアナカステ国立公園、首都のベルモパンに立ち寄り、グアテマラ国境にほど近いサン・イグナシオという町まで。
　ベリーズは人口の少なさに反比例して自然が豊か、あの夢を食べるというバクが国獣だったり、約１５の種という世界で最も多彩な種類の蝶が棲んでいたりするらしいが、川沿い熱帯雨林の中のトレッキングコースは小規模かつ蚊が多くと、入場料５ドル（米ドル＄2.5）を損した気分もした。
　首都ベルモンパンは人口わずか7100人の田舎町。ハリケーン被害の多いベリーズ・シティから遷都されたという話だが、広い敷地の政庁ビル、小さく集まった広場、やけに幅の広い道路と大きなバスターミナル、そして数百メートル離れるともう農地と林しかないという、いささか不思議な感じの町だった。
　ベルモパンからいくつかの丘と村落を越えて着いたサン・イグナシオは欧米人の姿が目立つ観光の町。中華系のレストランばかりが目立つなか、ベリーズ料理　Rice with Beans (豆入りご飯)のメニューを見つけ、せっかくなので食べてみる。ご飯は炒飯の感覚からするといささか水っぽいのだけれどそれなりに美味しく、肉やサラダも添えられて６ドル（米ドルだと３ドル）の価値は十分だった。