第2章 呪縛/2001年7~10月 あらすじ
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メキシコ合衆国 (United Mexican States) |
人口 | 1億230万人 | 面積 | 197万km2 |
首都 | メキシコシティ | 宗教 | キリスト教(カトリック) |
言語 | スペイン語 | 通貨 | ペソ |
旅行期間 | 2001年7月20日~2001年8月29日(41日間) | ||
訪問経路 | (アメリカ)→ティファナ~ラパス~グアダラハラ→グアナファト →メキシコシティ→オアハカ~メリダ→カンクン→(ベリーズ) |
メキシコ入国 植民時代の匂い残る高原地
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三ヶ国目メキシコ。
バハカリフォルニア半島南端のラパスから
船でマサトラン、さらにバスを乗り継ぎ、
第二の都市グアダラハラから自転車をこぎ始める。
車の運転は荒いが、
丘陵の景色は広々と、空気は涼しくて、
標高千メートルを越える快適な道が続く。
坂の多い高原都市グァナファト、
古い水道橋の残るケレタロ。
中世様式の教会群、
銀山で栄えた植民地時代の名残り。
アステカ帝国の残滓 太陽と月のピラミッド
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二千万の巨大人口を擁する首都メキシコシティ。
かつては湖上に浮かぶアステカの都。
アステカの誇りと植民地支配の軛が、
喧噪の中で交錯する。
日本人宿ペンションアミーゴに宿泊し、
出会った旅の先輩たちと訪れた、
メキシコを代表するテオティワカンの遺跡。
死者の道の最奥に建つ月のピラミッドから、
最大規模の太陽のピラミッドを眺め、
心を静かにして当時の光景を想像してみた。
ペダルは軽く 海風に乗って走る。
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メキシコシティを発ち、急峻な山岳地帯へ突入。
先住民たちの多く住むオアハカ。
スペインの建てた植民都市とは
また雰囲気の異なる古きメキシコの姿。
密林のマヤ遺跡パレンケを経て、
カリブ海に突き出すユカタン半島へ。
野口秀世ゆかりのメリダ。
大遺跡チチェンイツァのピラミッドを仰ぎ、
生贄を捧げたといわれる絶壁の池を覗き込み、
激しいスコールの雨にも降られ、走る。
世界的リゾートのカンクン。
スペイン語よりも英語が通じる白い砂浜。
ジャングルと海が出会う場所 人気のマヤ遺跡
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カリブ沿岸のジャングル地帯、
一路南へ、ペダルをこいでいく。
緑に囲まれた浜辺のロッジに泊し、
訪れたトゥルム遺跡は小規模ながら、
ジャングルと海が隣り合う印象深い絶景の地。
密林に生まれたマヤ文明が、海と出会った場所。
貧しい沿海部。
売店で買ったビスケットには蟻がたかっていて、
二つに割ってみると、中が蟻の巣になっていた。
おばちゃんに抗議すると、
すぐに取り替えてくれたけれど。
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ベリーズ (Belize) |
人口 | 24.1万人 | 面積 | 2.3万km2 |
首都 | ベルモパン | 宗教 | キリスト教(カトリック) |
言語 | 英語 | 通貨 | ベリーズドル |
旅行期間 | 2001年8月29日~2001年9月2日(5日間) | ||
訪問経路 | (メキシコ)→ベリーズシティ→ベルモパン→(グアテマラ) |
小国ベリーズ 黒人多数の英語の国
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カリブ海に面した小さな国。
この旅に出るまで、
僕はこの国の存在を知らなかった。
旧英連邦のベリーズ。
公用語は英語、黒人が多く居住し、
道路標識はマイル標示だった。
生温い風、少しピリリとした町の空気。
昼間からビールを飲んで、
道端にたむろしている目つきのよくない男たち。 ベリーズシティはこぢんまりとした町で、
僕は日本を遠く離れていることを
沸々と感じていた。
そしてグアテマラへ 悲劇の待ち伏せ
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ベリーズからグアテマラへと向かう道。
狭くくねくねした坂が続き、
ときおり猛烈に吠えながら犬が追いかけてくる。
グアテマラの地図によると、
ベリーズはグアテマラの領土となっている。
そんな国境の小さな橋に、
しかしさしたる緊迫感はなく、
国境からの道はしばらく未舗装の砂利敷で、
激しいスコールの出迎えを受けた。
黒人の国ベリーズから、
褐色の肌、マヤの末裔たちの国グアテマラへ。
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グアテマラ共和国 (Republic of Guatemala) |
人口 | 1123万人 | 面積 | 10.9万km2 |
首都 | グアテマラシティ | 宗教 | キリスト教(カトリック) |
言語 | スペイン語、マヤ系諸言語 | 通貨 | ケツァール |
旅行期間 | 2001年9月2日~9月18日(17日間) | ||
訪問経路 | (ベリーズ)→サンタ・エレーナ~チマルテナンゴ/アンティグア ~チチカステナンゴ~パナハッチェル~グアテマラシティ~(エルサルバドル) |
密林に林立する巨大遺跡 強盗事件前夜
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湖に面したサンタ・エレーナの町。
欧米からの旅行者ばかりを乗せた
バスに揺られてティカル遺跡へ向かう。
テオティワカンやチチェン・イツァで見た
なだらかな起伏をしたピラミッドとは異なり、
鋭角に屹立する摩天楼のようなピラミッド。
広大で鬱蒼とした密林の古代都市。
その夜、首都グアテマラシティへ向かう
夜行バスは思ったよりも早く、
まだ明けやらぬ闇の時間帯に到着した。
傷心の古都アンティグア 9・11発生
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突然後頭部を殴打され、自転車を奪われた。
世界一周を夢見た旅は、あえなく挫折した。
自転車を失い、旅の目的を失い、
スペイン語学校で有名な町、アンティグアの路地。
多くの旅人がここでスペイン語を会得し、
中南米の各地へとまた旅立っていく。
気力なく、一週間だけ怠惰に通う。
そんなある日の9・11
地元新聞のスペイン語の見出しが、
「戦争!」と過激に踊っていた。
スペイン語学校の一週間終え 旅は続く
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バスに乗ってグアテマラの田舎を巡る。
マヤ系先住民の暮らすチチカステナンゴ。
色鮮やかな貫頭衣を身にまとった女性たち。
カトリック教会の入口では煤けた香が焚かれ、
まるでキリスト教とは思えない異教の雰囲気。
小高い丘の上には、
今も人々の信仰を集めるマヤの祭壇があった。
パナハッチェルの青く澄んだ湖。
周辺には素朴な村が点在し、
話しかけてきた子供に誘われるままついていけば、
煙草好きの神様が祀られている祠があった。
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エルサルバドル共和国 (Republic of El Salvador) |
人口 | 664.2万人 | 面積 | 2.1万km2 |
首都 | サンサルバドル | 宗教 | キリスト教(カトリック) |
言語 | スペイン語 | 通貨 | コロン |
旅行期間 | 2001年9月18日~2001年9月20日(3日間) | ||
訪問経路 | (グアテマラ)~サンサルバドル~(ホンジュラス) |
中米治安最悪国 もう一度やられたら終わりだ
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強盗に遭ったグアテマラシティから、
国際バスに揺られてサンサルバドルへ。
バスの故障で夕暮れ過ぎての到着。
宿までわずか数百メートルの道のりが怖い。
治安の悪さで知られる中米の中でも、
とりわけ悪い噂ばかりを聞いたエルサルバドル。
捨てずにおいたボロボロのTシャツ姿で
訪れた市場は、意外と活気があり賑わっていた。
エルサルバドルからはローカルバスの旅。
国境を越えてホンジュラスへ。
碑文の刻まれた石碑が並ぶコパン遺跡を訪ねた。
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ホンジュラス共和国 (Republic of Honduras) |
人口 | 727.3万人 | 面積 | 11.2万km2 |
首都 | テグシガルパ | 宗教 | キリスト教(カトリック) |
言語 | スペイン語 | 通貨 | レンピーラ |
旅行期間 | 2001年9月20日~9月24日(5日間) | ||
訪問経路 | (エルサルバドル)~コパンルイナス~テグシガルパ~(ニカラグア) |
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ニカラグア共和国 (Republic of Nicaragua) |
人口 | 563万人 | 面積 | 12.9万km2 |
首都 | マナグア | 宗教 | キリスト教(カトリック) |
言語 | スペイン語 | 通貨 | コルドバ |
旅行期間 | 2001年9月24日~9月26日(3日間) | ||
訪問経路 | (ホンジュラス)~マナグア~(コスタリカ) |
エルサルバドル、ホンジュラス 淡々と国境を越えていく
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首都テグシガルパは陰鬱な雰囲気。
中心街の市場付近に活気はなく、
重苦しさを感じた。
ホンジュラスからニカラグアのマナグアへ。
とても首都とは思えない閑散とした市街地。
平和でのどかに見える低層の町並みだが、
内戦時に出回った銃が巷に流通し、
発砲事件は絶えないのだという。
見所はさしてなく、
危険を恐れ危険に挑む中米諸国が淡々と続く。
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コスタリカ共和国 (Republic of Costa Rica) |
人口 | 430万人 | 面積 | 5.1万km2 |
首都 | サンホセ | 宗教 | キリスト教(カトリック) |
言語 | スペイン語 | 通貨 | コロン |
旅行期間 | 2001年9月26日~9月30日(5日間) | ||
訪問経路 | (ニカラグア)~サンホセ/フォルツーナ~(パナマ) |
ニカラグアからコスタリカ 風爽やかなれど気は晴れず
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国際バスでコスタリカへ。
高原の首都サンホセ。
中米では比較的治安がよいとされ、
表通りには賑やかな商店が軒を連ねている。
市場はごみごみとし、裏路地はやはり近寄り難い。
郊外に行けば豊かな自然の多い国で、
火山と温泉で有名な国立公園を訪れた。
スペイン語圏に突入して二ヶ月が経ち、
随分と言葉は話せるようになってきたが、
傷は癒えず、気は晴れず。
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パナマ共和国 (Republic of Panama) |
人口 | 312万人 | 面積 | 7.5万km2 |
首都 | パナマシティ | 宗教 | キリスト教(カトリック) |
言語 | スペイン語 | 通貨 | バルボア |
旅行期間 | 2001年9月30日~10月3日(4日間) | ||
訪問経路 | (コスタリカ)~パナマシティ~(イタリア) |
中米地峡パナマ 道、ここで途絶える
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中米最後の国パナマ。
雑多な人種が行き交う混沌とした街、
世界の十字路パナマシティ。
海に面しては高層ビルが立ち並ぶ。
大平洋と大西洋を結ぶパナマ運河を眺め、
交通の要衝に建てられた砦の跡を訪れる。
当初の予定の南米大陸に道は通じておらず、
旅への気概は復活をみず、
バックパックを背負いとぼとぼと
空港へ向かうバスに乗り込んだ。
日本を飛び出して、わずか四ヶ月余りのこと。