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自転車世界一周の旅/第24話 国際バスに揺られて~ニカラグアからコスタリカへ


 ホンジュラスの首都テグシガルパのバスターミナルで、僕は日本人の男性に出会った。

「社会人なんで短期の旅行なんだけど、前回はグアテマラまで来たから、今回はコスタリカまで行こうと思って。小刻みにね」

 僕と彼は同じバスで、ニカラグアに向かった。僕はこの先の旅程をどうするか迷っているという話をした。ただ、強盗事件については話す気にならず、黙っていた。ニューヨークの同時多発テロ事件を引き合いに出し、世界情勢が不穏なのでと苦しい言い訳をした。

「せっかく出てきて、今帰るのはもったいないんじゃないの」

 そっけない返事が返ってきた。

 ホンジュラス共和国
(Republic of Honduras)
 ニカラグア共和国
(Republic of Nicaragua)

ホンジュラス→ニカラグア/のんびりした国境
【ホンジュラス→ニカラグア/のんびりした国境】

 国境を越えると道路は途端にガタガタ、橋の架け替え工事がやたらに目立ち、ひなびた貧しい田園風景のまま、首都マナグアに着いた。マナグアは、これで首都かと思わず拍子抜けしてしまうほど、建物も人も少なく、緑ばかりが多くて閑散としていた。

 低地の湖に面して、熱帯雨林に埋もれるように広がるマナグア。外資系のホテルや銀行などのビルが辛うじてポツポツと建っている。とはいえ、のどかで治安は良いのかと思えばそうではなく、安宿の集まるマルサ・ケサダ地区には子供の物乞いが多かった。

 日本の新聞を読みたくて訪れた日本大使館では、六月に発砲事件があり、白昼日本人の女性旅行者が重傷を負ったという話を聞かされた。

「ひったくりに遭って、とっさに抵抗したところ、相手が運悪く銃を持っていたんですね。あなたも気をつけて下さい」

 若い大使館員が丁寧な口調で、しかし淡々と忠告をくれた。

ニカラグア/首都マナグア、旧市街の広場
【ニカラグア/首都マナグア、旧市街の広場】

 旧市街から三十分ほど歩いた新市街には、巨大なショッピングセンターがあった。入口には警備員がいて、自動扉があって、中に入ると冷房が効いていて、この国のお金持ちたちが買い物を楽しんでいた。サンサルバドルでも似たようなショッピングセンターが、新市街にはそびえていた。

 彼らは決して旧市街になど足を踏み入れないのだろう。

(なんてところだ)

 僕はまた陰鬱とした気分になった。

ニカラグア/マルサ・ケサダ地区
【ニカラグア/マルサ・ケサダ地区】

*   *   *

 コスタリカ共和国
(Republic of Costa Rica)

ニカラグア→コスタリカ/国境越えを繰り返す
【ニカラグア→コスタリカ/国境越えを繰り返す】

 マナグアからまた国際バスに乗り、コスタリカの首都サンホセへ。コスタリカは軍隊を持たず、非武装中立を掲げる平和の国。中米諸国の中では治安が良く、エコツーリズムが盛んで、欧米人旅行者に人気があるといわれている。

 たしかにサンホセの街を歩いていると、日が暮れてからも店の明かりは煌々とし、人通りは絶えず、メキシコ以来久しぶりに、過度の緊張感なく歩くことができた。歩行者専用の買い物道路には、銀行やブランドショップが建ち並び、先進国の繁華街と比べても遜色がないように思えた。まだ九月だというのに、クリスマスの飾りやサンタクロースの人形が売られているのがおかしかった。

 ただ中心部を少し離れると、道端にゴミ屑が目立ち汚かった。特にバスターミナルや市場が集まるコカコーラ地区の界隈は、目つきの良くない連中が多く、剣呑とした雰囲気があった。

コスタリカ/アレナル火山観光の拠点フォルツーナ
【コスタリカ/アレナル火山観光の拠点フォルツーナ】

 そんなサンホセを離れ、僕はアレナル火山国立公園を訪れた。せっかくなので一ヶ所くらい、大自然を観光しようと考えたのだ。  起点となる町は、サンホセからバスで四時間ほどのフォルツーナ。整備された小さな公園を中心に、宿、旅行代理店、土産物屋が並び、料金はどこも地元のコロンではなく米ドル表示、完全に観光のための町になっていた。

 ミニワゴンのツアーに参加したのは翌日の午後。まずは温泉に案内された。中米地峡は地震多発の火山地帯であり、日本同様に温泉が多い。  僕が訪れたのは観光客向けのリゾートスパで、水着着用だったが、日本人好みの熱いお風呂もあった。熱帯植物の生い茂る庭の彼方に、アレナル火山の雄姿が見えた。スコットランドから来たという女性二人組が一緒だったが、うち一人は熱いのが苦手なのか、ずっと別のぬるいプールのほうにつかっていた。

 日が落ちて、ワゴンは火山の展望台へ。暗闇にマグマの噴出する赤い光がギラギラと輝いていた。噴火に伴う轟音も聴くことができた。ただ、それ以上に印象的だったのは蛍だった。展望台の周りあちこちで、点いては消え、消えては点く数十匹の蛍たちが、気ままに舞っていた。なんとも気の利くツアーで、参加者には冷えた缶ビールが振る舞われた。

 楽しく、安全で、優雅な、大満足のツアーだった。僕がやりたかった旅とは、全くもって違っていた。

コスタリカ/活気のあるサンホセ市街
【コスタリカ/活気のあるサンホセ市街】

出発から6940キロ(40000キロまで、あと33060キロ)

できごと 距離
2001 05 26 日本 旅立ち 空路アラスカへ
27 アメリカ アンカレジにて自転車購入
0
07 カナダ 自転車にて入国(ビーバークリーク)
14 アメリカ 自転車にて再入国(スキャグウェイ)
22 船にてアメリカ本土上陸
16 サンタモニカ手前
4000
20 メキシコ 自転車にて入国(ティファナ)
08 05 トゥーラ手前
5000
06 メキシコシティ到着
24 チチェンイツァ先
6000
29 ベリーズ 自転車にて入国(オレンジ・ウオーク)
09 02 グアテマラ 自転車にて入国(サンタ・エレーナ)
04 強盗事件発生 自転車を失う
6940
18 エルサルバドル バスにて入国(サンサルバドル)
20 ホンジュラス バスにて入国(コパンルイナス)
24 ニカラグア バスにて入国(マナグア)
26 コスタリカ バスにて入国(サンホセ)

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